Research Project
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
東南アジア熱帯雨林の優占種でマスティング型の繁殖様式を示すフタバガキ科樹種の、マスティング年の資源動態について環状剥皮や葉の切除実験などを組み合わせた操作実験を行った。その結果、フタバガキ科の巨大高木Dryobalanops aromaticaは、開花には樹体内の貯蔵炭水化物を利用するものの、種子の成熟に必要な資源の大部分は、付近の葉の光合成生産物が直接使われていることがわかった。また、D.aromaticaをはじめフタバガキ科樹種9種の繁殖器官の光合成能力を調べたところ、いずれの樹種も繁殖器官の光合成能力はそれほど高くなく、自身の呼吸による消費を補う程度であることがわかった。これらの結果については2編の投稿論文の形にまとめ国際誌に投稿し、その内1編はすでに印刷中である。またマスティングには葉の光合成が非常に重要な役割を持つという結果を受け、熱帯雨林の林冠を構成する主要樹種の光合成能力の樹種特性と、その特性を生み出す要因についても詳細な調査を行った。そして、同じ林冠環境下にあっても、光合成能力には非常に大きな種間差があり、この種間差を生み出す最大の要因としては葉の構造、特に柵状組織の発達具合が深く関係していることを明らかにした。この結果についても現在国際誌に投稿中である。さらに、繁殖と深いかかわりを持つと考えられる展葉のメカニズムについても注目し、マレーシア・サラワク州・ランビル国立公園の林冠から林床に到る39種48個体の展葉のタイミングと気象要因との関連性について調査を行った。その結果、一般に一年中温暖多雨で明瞭な季節がないと考えられている熱帯雨林であるが、樹木の展葉には不定期に訪れる短期間の極端な乾燥が深く関わっており、乾燥の後の降雨時に多くの樹種が同調して展葉を行っていることがわかった。この結果についても国際誌に投稿し、すでに受理済である。
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