ニジェ-ル川大湾曲部諸文化の生態学的基盤及び共生関係の文化人類学的研究
Project/Area Number |
02041029
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Research Category |
Grant-in-Aid for international Scientific Research
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Allocation Type | Single-year Grants |
Section | Field Research |
Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
川田 順造 東京外国語大学, アジア・アフリカ言語文化研究所, 教授 (50107835)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
SAMBA DIALLO マリ国立高等師範, 教授
ISSAKA BAGAY フランス海外科学, 技術研究機構, 研究員
MOUSSA SOW マリ国立人文科学研究所, 研究員
ABDOULAYE BA マリ国立人文科学研究所, 研究員
KLENA SANOGO マリ国立人文科学研究所, 所長
BREHIMA KASS フランス海外科学, 技術研究機構, 研究員
中村 雄祐 東京大学, 教養部, 助手 (60237443)
足立 和隆 東京大学, 理学部, 助手 (70221041)
竹沢 尚一郎 九州大学, 文学部, 助教授 (10183063)
坂井 信三 南山大学, 文学部, 助教授 (30157119)
応地 利明 京都大学, 文学部, 教授 (60024212)
KENA SANOGO マリ国立人文科学研究所, 所長
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Project Period (FY) |
1990 – 1991
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Project Status |
Completed (Fiscal Year 1991)
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Budget Amount *help |
¥12,000,000 (Direct Cost: ¥12,000,000)
Fiscal Year 1991: ¥2,000,000 (Direct Cost: ¥2,000,000)
Fiscal Year 1990: ¥10,000,000 (Direct Cost: ¥10,000,000)
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Keywords | ニジェ-ル川大湾曲部 / 生態学的条件 / 稲作 / 漁撈 / イスラム化 / 口頭伝承 / 身体技法 / 狩人 / イスラムと世俗権力 / 多民族共生 / ニジェ-ル川流域考古学 / 魚撈技術 |
Research Abstract |
本研究は、ニジェ-ル川大湾曲線の多様な自然条件が複合された生活環境における諸民族の共生関係を、北アフリカとサハラ以南の黒人アフリカとの媒介となってきたこの地域の歴史的背景の中で、総合的に検討することにある。この方針によって、これまで3次にわたる実地調査を行い、2冊のレポ-トを刊行してきた。 平成3年度は平成2年度の現地調査を整理・検討し前2回の継続発展として、この地域の農耕および漁撈の特性を明らかにすること、身体技法と人種的身体特徴および生態学的条件との関係を検討すること、この地域の社会へのイスラムの浸透の過程とその社会的・歴史的意義を考慮すること、文字を用いることが少なかったこの地域の社会で、歴史研究にとっても、社会学的研究にとっても重要な言語伝承の分析をすすめ、伝承者の社会的役割を究明することに主眼が置かれた。 第3次調査では応地は前回の雑穀の耕作法にひきつづいて、この地域のとくに湿原や氾濫原に発達した稲作の形態についての広汎を実地調査を行い、土地利用との関わりでの類型化を試みた。この種の調査はこの地域での研究としては初めてのものである。マリ側の研究分担者カツシ-ボは、前2回のボゾ族の漁撈についての研究をさらに発展させ、ボゾ社会での漁撈技術の変化と社会変化、意識の変化の側面について実地調査を行った。カツシ-ボの研究と密接な関係をもって、竹沢は、ボゾ社会の血縁集団をこえた共同労働組織の形成を、歴史的な視点で明らかにするための集約的な実地調査を行った。マリ側の研究分担者のサノゴは、カツシ-ボ、竹沢の調査地域、および後述の坂井の調査地域に接する地域の技術文化の歴史的変化についての、考古学遺物の発堀調査を、第2次調査にひきつづいて行った。 文化によって条件づけられた身体技法の実地調査に基づく研究は、この総合調査計画の最初から川田が推進してきたものであるが、今回も自然人類学者足立を研究分担者として、身体技法の研究の基礎となる生体計測を中心とする調査を行った。身体特徴の人種的差異および生態学的条件による差異を検討するため、内陸サバンナ地帯のス-ダン亜人種に属するマリ南部のバンバラ=フルベ族を主な対象としながらも、これと比較する目的でギニア湾沿岸熱帯雨林地帯のギニア亜人種に属するヨルバ族(ナイジェリア)の生体計測も同時に実施した。十分な学術的基礎をもった生体計測は、アフルカでは今回のものが初めてであり、その成果は国際学界に対しても大きな貢献となると思われる。 坂井は、西アフリカ内陸部のイスラム化の歴史研究にとって重要な都市ジャの歴史伝承の採録と分析を行った。特にジャを中心とするジャワラの非イスラム王権と、セク・アマドゥのイスラム帝国の影響との関係を明らかにすることが今次の調査の主要課題であった。マリの言語社会学者ソ-も、坂井の歴史研究と関係をもつこの地域のフルベ族の口頭伝承を広汎に採録し、言語社会学的分析を担当した。同じくマリの言語社会学者であるバリは、前回のジェンネでの調査を発展させ、中部デルタ地域での多言語使用の実態を調査したが、これは上記坂井の口頭伝承を資料とする歴史研究に基礎づけを与えるものである。 口承文芸特に特定の楽師集団による語りものは、マリ帝国の歴史をはじめとする歴史研究の重要な資料となっているが、中村はこれまでの語り部、楽師グリオについての基礎研究から進んで、キタ地方の狩人の伝承の精密な採集・分析を行った。マンデ系社会における狩人の戦士としての、あるいは野と村の媒介としての役割の解明が、中村の調査によって前進することが期待される。 第3次の調査では、第2次調査までの総合的・学際的連携が一層深められ、現地マリの研究者と日本人研究者の協力によって、国際学界に対しても重要な貢献となる研究が実施されたということができる。今年度も前2回と同様上述の成果をマリの公用語であるフランス語で刊行した。これによって相手国への調査成果の還元と国際学界への寄与を期している。
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Report
(2 results)
Research Products
(11 results)