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¥10,600,000 (Direct Cost: ¥10,600,000)
Fiscal Year 1990: ¥10,600,000 (Direct Cost: ¥10,600,000)
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Research Abstract |
〔研究目的〕個体発癌の要因として,がん遺伝子の活性化やがん抑制遺伝子の不活性化が関与していることが指摘されている。本研究は,ヒトのがんから最も頻繁に活性型が検出されるras群遺伝子の体細胞での突然変異発生の機構と,腫瘍発生の組織特異性との関係を調べることを目的に,ヒトcーHaーras遺伝子導入マウスを作成した。 〔研究成果〕ヒトcーHaーras導入トランスジェニック(以下Tgと略)マウスは,高頻度に血管内腫を発症し,その血管肉腫の全例において導入遺伝子の第61番コドンに体細胞突然変異が認められた。この事実は,挿入部位の異なる3系統のトランスジェニックマウスで同一であったことから,ヒトcーHaーras遺伝子に特有のものであり,挿入部位によらないことが示唆された。そこでマウスcーHaーras遺伝子導入によるras遺伝子の過剰発現系の確立を試みることにした。今年度は,マウスゲノムcーHaーras遺伝子の単離を行ない全エキソンを含むゲノム遺伝子の単離に成功した。この遺伝子導入マウスは現在作成中である。 次に,ヒトcーHaーras導入Tgマウスに化学癌物質を投与し,その発癌性を検討した。アルキル化剤メチルニトロソウレア(MNU)を腹腟に1回投与し,2週間毎に全臓器での腫瘍発生を調べてみた結果,投与後約4週で,前胃に乳頭腫の発生が60%のTgマウスに認められ,6週目には全Tgマウスに前胃乳頭腫が検出された。非Tgマウスにはまったく腫瘍の発生は認められなかった。発生した前胃乳頭腫の導入遺伝子の突然変異を調べた結果56例中55例において,第12番コドンの第2文字に変異が確認され,活性化していることが判明した。以上の事実は,組織特異的発癌の機構を調べるために良い系を提供している。さらに化学発癌物質のスクリ-ニングに用いることができることが示された。
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