Budget Amount *help |
¥3,100,000 (Direct Cost: ¥3,100,000)
Fiscal Year 1990: ¥3,100,000 (Direct Cost: ¥3,100,000)
|
Research Abstract |
本研究は,無菌マウスにヒトの腸内フロ-ラを定着させ,ヒトフロ-ラマウスを作出し,このマウスに高脂肪食ないし対照の基本食を与えて飼育し,大腸がん誘発物質1,2ージメチルヒドラジン(DMH)で処置して大腸がんの発生を比較検討したものである.雌雄のCF#1系無菌マウスにヒト糞便の10^<ー3>希釈液を投与し,一週間後にそのマウスの腸内フロ-ラを検索し,ヒトフロ-ラの定着状態を確認した.その確認後,交配繁殖して得られた雄子マウスを実験に供した.そのヒトフロ-ラマウスに10週齢から高脂肪食ないし対照食を与え,各マウスに14週齢からDMH20mg/kgを週一回25回連続して腹腔内注射し,その最終投与後3週目に剖検し,大腸腫瘍の発生状態およびその腫瘍の組織について病理学的に検索した.マウスにおけるヒトフロ-ラを検索したところ,もとのヒトフロ-ラをほぼ反映することが明らかにされた.そのフロ-ラは,高脂肪食あるいは基本食によって前者の各菌群の占有率が後者に比べてEubacteriumの減少ならびにPeptococcaceae,BifidobacteriumおよびClostridiumの増加と変動した.ヒトフロ-ラマウスの大腸腫瘍は,基本食群の発生率10/14(71%),平均腫瘤数(マウス一匹あたりの腫瘤数)4.2±3.8(腫瘤総数59)に対して高脂肪食群では,それぞれ13/13(100%),3.3±1.7(48)であった.基本食群で大腸腫瘍の発生しない個体が4例認められたにもかかわらず,統計的には発生率,平均腫瘤数ともに両群間に差は認められなかった.これらの成績から,高脂肪食の摂取およびそれによる腸内フロ-ラの変動だけでは,必ずしも大腸腫瘍の発生に顕著に影響しなかったことから,大腸発がんに関与する食餌は,高脂肪に加えて高蛋白である可能性が考えられる.今後,ノトバイオ-トによる発がんモデルを確立し,腸内菌の大腸発がんへの関与を明らかにすることが肝要である.
|