Research Abstract |
本研究は,既存の資料を収集し,比較検討し,デ-タ解析して,社会が潜在的にもつ自然災害に対する防災の能力が長期にわたっていかに変遷してきたかを考究するを目的としている。当初の計画に従って,相互の討論を通じ,共通の問題を検討し,それぞれの立場から,各課題について各研究分担者ごとに報告をまとめた。すなわち,北海道から九州にいたる地方別に問題をとらえ,各地域において特色ある自然災害現象の資料を集め,解析し,検討した。自然災害は,雪永災害や冷害,水害,地盤災害,地すべり,震災,火山噴火,農林災害など現象別に特有の社会環境との関係をもつ。これらの問題について,それぞれ専門分野の立場からばかりでなく,社会学や経済学的な見地からも,社会との関係を調査し,検討した。これらの研究は,災害現象の周期性,歴史的変遷,自然現象と社会との関わり方,経済投資の問題。地域住民の考え,など多義にわたっている。一方では,災害に関係する自然現象が1000年以上の長い周期のものから10年程度の周期のもの,ごく最近の短期間の現象といったように変化の周期とその集積効果に特性があることが明らかになったが,同時に,他方では,社会自体も,数百年前にさかのぼる歴史時代から現在にいたる変化。戦前から戦後にかけての変遷,そして最近の都市化に関係した変化といったように,著しい変化の特色が認められる。災害はこれら相互の関係において発生するため,被災形態やその特質,そしてその対策はこれら両者の特性に大きく依存する。そして,それぞれの時期に起こった河川災害,地盤災害,農林災害にその時代的な特徴が現れている。以上の結果を24編の論文からなる総括報告書としてまとめた。
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