Research Abstract |
融雪出水過程は,積雪の融雪過程,融雪水の積雪内浸透過程および地表面に到達した融雪水の流出過程からなるが,地表面に到達した融雪水の流出過程は基本的には降雨流出過程と同じであると考えられ,降雨流出に対するこれまでの研究成果が応用できる。従って,融雪出水の流出機構の解明および融雪出水の予測に当たっては融雪過程とその積雪内浸透過程を解明することが重要であり,本研究では,金沢大学工学部構内の実験斜面での屋外観測・実験および手取川流域尾口村で現地観測・実験を行なうとともに,融雪水の積雪内浸透に関する室内実験を行なったが,その結果,1.観測結果および理論的考察から気温,風速等の比較的容易に入手可能な気象デ-タのみを用い,放射収支,顕熱伝達,潜熱伝達等の熱収支における各項の評価に基づく表面融雪算定モデルを構築した。2.一次元熱伝導モデルによる積雪下面融雪量の算定結果はスノ-ライシメ-タを用いた観測値とよく一致したが,積雪期間の総積雪下面融雪量は全融雪量の約10%に達し無視できない量であると同時に,この量が冬期の渇水流量に大きな役割を果たすことを確かめた。3.積雪カラムを用いた室内浸透実験から,固有の不飽和透水係数の範囲は,1.94×10^<ー8>〜6.11×10^<ー8>m^2であった。4.圧密実験の考察により,北陸地方のぬれ雪の圧縮過程に対しても粘性圧縮理論の適用が可能であることが示された。5.ここで得られた結果を基に,降積雪から融雪流出に至る一連の物理過程,すなわち,降雪過程,積雪過程,圧密過程,融雪過程および浸透過程を組み込んだモデルにより,積雪深,積雪相当水量,積雪密度および積雪量の冬期の経時変化を算定した結果,計算値と実測値はよく一致した。 また,長期にわたる融雪出水による河川構造物の被災機構の解明と防災対策のための基礎的研究として,掃流砂および浮遊流砂の非平衡の立場から河川構造物の局所洗掘機構について理論的,実験的に考察した。
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