アスベストによる呼吸器障害発生及び発癌のメカニズムに関する生化学的研究
Project/Area Number |
02202228
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research on Priority Areas
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
井口 弘 京都大学, 医学部, 助手 (90025643)
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Project Period (FY) |
1990
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Project Status |
Completed (Fiscal Year 1990)
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Budget Amount *help |
¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,300,000)
Fiscal Year 1990: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,300,000)
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Keywords | アスベスト / チオバルビツ-ル酸反応 / 脂質過酸化 / 細胞膜障害 / 酸化的ストレス / 乳酸脱水素酵素 / 発癌 |
Research Abstract |
アスベスト(Asb.)の呼吸器毒性や発癌機構は未だ明らかでない。しかし私はAsb.の細胞毒性に関し、次のことを既に明らかにして来た。即ち、1.Asb.と赤血球とを孵置すると赤血球膜脂質の過酸化が起り、数分で溶血する。2.この溶血はカタラ-ゼや種々の抗酸化剤及び遊離基除去剤の添加で阻止される。今回はこの様なAsb.の脂質過酸化作用を肺線維芽細胞を用いて明らかにした。以下にその実験方法と結果を概括する。 ラット胎児の肺線維芽細胞を分離、培養し、高密的単層細胞の段階で種々濃度(50〜1000μg/ml)のUICCクロシドライト(CH),アモサイト(AM)及びクリソタイル(CR)を加え、更に12,24及び48時間培養した。これら培養液及び細胞層の脂質過酸化物量はチオバルビツ-ル酸法で,細胞膜脂質過酸化に伴う膜障害は培養液中の乳酸脱水素酵素活性で測定した。Asb.添加後12時間で培養液及び細胞層の脂質過酸化物は増えなかったが、24時間後には250μg/ml以上のAsb.添加では培養液中過酸化物は有意に増加,48時間後には更に増加した。この増加は培養液中乳酸脱水素酵素の増加を伴い互に有意な相関(γ=0.67)を示した。このことはAsb.が細胞膜脂質を過酸化し、細胞膜を障害したことを示す。一方細胞層脂質過酸化物はAsb.添加24時間では250μg/mlのCRでのみ,48時間では250μg/mlのCRと500μg/mlのAMでのみ有意に増加した。この様に細胞層過酸物量はCR,AMの鉄含量の高いAsb.で増加した。以上のようにAsb.は肺線維芽細胞の細胞膜及び細胞内脂質に酸化的ストレスをもたらして脂質過酸化反応を起し細胞を障害することを明らかにした。この事実は酸化的ストレスによる過酸化反応で細胞核のDNAをも障害する可能性,更にはDNA障害による発癌の可能性をも示唆する。今後Asb.のDNA障害作用をニックトランスレ-ション法を用いて明らかにするべく、目下検討中である。
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Report
(1 results)
Research Products
(3 results)