Budget Amount *help |
¥2,200,000 (Direct Cost: ¥2,200,000)
Fiscal Year 1990: ¥2,200,000 (Direct Cost: ¥2,200,000)
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Research Abstract |
中性およびイオン性の有機ラジカル結晶で,その分子間で不対電子の間に働く磁気的な相互作用について調べている。安定な有機ラジカルの結晶で,分子間に強磁性的な相互作用を示すものは非常に限られている。すでに本重点領域研究の前半において,ガルビノキシルラジカルについて詳しい研究を行い,その分子間強磁性的相互作用について一定の見解を得るにいたったが,その指針に従って合成したpーニトロフェニルニトロニルニトロキシド(pーNPNN)が,強磁性的な相互作用を示す新しい物質であることが分かったので,その発現機構を調べる目的で、pーNPNNおよびその誘導体の磁性の研究を行った。 pーNPNNには,いくつかの多形が知られている。すでにαーおよびβー相の研究が進められ,いずれも強磁性的な相互作用を示すことが報告されている。今回当研究室では,β相の単結晶を作る目的で再結晶を行ったところ,まったく別の結晶形をγ相を見いだした。 磁化率の温度依存性は,温度の全領域でキュリ-・ヴァイス則にしたがい,温度軸の正のところをよぎる。つまり,強磁性的な相互作用を有し,ヴァイス定数は,θ=2.4Kである。これは,α相,β相で観測されている値よりも大きく,これらの中では最も強い相互作用である。 2.3および4.9Kで測定した磁化曲線は,速く立ち上がり,高磁場則で飽和して,それぞれS=3とS=3/2のブリルアン関数の曲線とよく対応している。すなわち,2.3Kでは結晶中のスピンは,あたかも6個が平行に結合して一つの単位を形成しているかのごとく振る舞う。温度が低くなるほど,分子間の交換相互作用が効くようになり,このような結果が得られたものと考えられる。
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