Research Abstract |
TC型I相iーAlーLiーCuは高圧下でI相→アモルファス相→秩序相の二段階の相転移を起こすことをX線構造解析から前年度までに明らかにしたが、この転移のメカニズムを調べるため、更に詳しい構造解析と電気抵抗の圧力変化の研究を行った。電気抵抗は各転移の前後で急激な減少を示した。I相からアモルファス相への転移に伴う抵抗減少は特に重要である。すなわち、通常秩序性の高い構造ほど抵抗値が小さくなると考えられるが、その常識を破る結果となるからである。これは準結晶がフェルミ準位附近で状態度度が小さく局在化する傾向を示すものとして理解された。また,I相→アモルファス相への転移前後のX線構造解析から、I相の回折X線ピ-クの線巾が転移の前に急激に大きくなり、転移開始後一定となることも明らかとなった。これは単準結晶が高圧下でファイゾンの導入により、小さなグレインの多くの異形をもつ近似結晶へと変形し、アモルファス化するものと解釈された。 一方、MI型I相iーAlーRuーCuを30万気圧まで加圧し、I相の安定性,相転移の有無も調べた。iーAlーRuーCuはこの圧力まで安定で相転移は見られなかった。体積vs.圧力の関係から求めた体積弾性率は150GPaと比較的大きく,同じMI型iーAlーMnの値に近く,iーAlーLiーCuと比べると著しく大きいものであった。従って,I相の体積弾性率はI相の型に依存し,構成元素には依らないことが明らかとなった。iーAlーLiーCuはフェイゾンの導入により相転移を引き起すことが明らかとなったが、iーAlーRuーCu,やiーAlーMnではそれぞれ30万気圧,40万気圧まで安定であり,その圧力はiーAlーLiーCuの転移圧より高く,これら1つの準結晶では今のところ綿巾の増大は見い出されておらず,転移の徴候は見られない。何故,iーAlーLiーCuにおいてのみ高圧下でフェイゾンが導入されるかは今後の問題である。
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