Budget Amount *help |
¥2,100,000 (Direct Cost: ¥2,100,000)
Fiscal Year 1990: ¥2,100,000 (Direct Cost: ¥2,100,000)
|
Research Abstract |
金属(薄膜)ー半導体(基板)接合界面では,室温程度の低温においても合金属が生成する現象を解明することを目指して,軟X線励起による放出光電子の分光[光電子分光法(PES)]や,電子励起により放射された軟X線の分光[軟X線分光法(SXES)]により,その接合界面での電子状態,および原子的構造を実験的に明らかにする研究を行った。 筆者らの一部を含むグル-プはPESの研究から,共鳴光電子放出の現象を初めてAu(θ〜1)/Si(111)2x1系において見いだし,界面合金化過程における金属原子の初期吸着段階での化学結合の重要性を示唆した。これは今年度の研究から,コバルトのようなAu以外の金属とシリコンの接合系でも同様に起こっていることが明らかにされた。 ところで,金属シリサイドにおける金属原子とシリコン原子との間の化学結合については,金属のd電子と,シリコンの3p電子との間の結合のみが価電子帯のフェルミ準位付近の主要な部分を構成しているというようにこれまで信じられてきた。しかし,これまでのNi(Co)ーシリサイドについてのわれわれのSXES法による研究から,Si(3s)起源の電子状態もフェルミ準位付近まで状態密度を持つことが明らかにされた。本年度は遷移金属としてTiおよびZrを取り上げて実験を行った。そしてTiSi_2のSiーL_<2.3>放射軟X線分光測定の結果,TiSi_2からのSiーL_<2.3>スペクトルには,価電子帯の頂上付近の信号が,バルクSiのそれと比較して増大している特徴が見いだされた。このスペクトルをX線光電子分光法により求めたSi(2p)準位の結合エネルギ-を用いて結合エネルギ-にひきなおし,理論計算の結果と比較し検討した。その結果,TiSi_2のSiーL_<2.3>軟X線スペクトルに観測されたE_F付近の信号は,主としてSi(s)価電子状態に起因するものと結論された。 また,このようにSiーL_<2.3>軟X線スペクトルがSiとTiSi_2とで異なることを用いることにより,Ti(薄膜)/Si(基板)接合界面の分析を試みた。その結果,Ti(超薄膜)/Si(基板)接合を数100℃程度の低い温度で熱処理した場合,表面にTiSi_2結晶薄膜が形成され,そのTiSi_2薄膜と基板Siとの接合部に結晶TiSi_2とは異なるTiSi_2層が形成されていることが明らかなった。この結果は,試料断面を透過電子顕微鏡,および蛍光X線分析により調べた結果と矛盾しない。なおこれらの方法と比べたSXES法の利点は,非破壊分析法であることである。
|