Budget Amount *help |
¥3,000,000 (Direct Cost: ¥3,000,000)
Fiscal Year 1990: ¥3,000,000 (Direct Cost: ¥3,000,000)
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Research Abstract |
HIVキャリア-からのAIDS発症予防法の開発には5年から10年にわたるウイルスの生体内での潜伏感染を支える分子機構の解明が重要と考えられる。HIVの遺伝子のひとつnetは細胞内シグナル伝達系を介して細胞核内に潜伏するHIVプロウイルスDNAからの遺伝子発現を折制し、長期間の潜伏感染を可能にしていると考えられてきた。そこで、申請者らは分子遺伝学的手法を用いてnet遺伝子産物によるHIV遺伝子発現に対する折制効果を検定した。その結果、net遺伝子コ-ド領域の細胞内導入による抑制効果が,net蛋白質発現の有無に関わらず認められた。詳細な検討により,ここで見られた抑制効果は,net遺伝子コ-ド領域がHIV遺伝子発現を制御するLTR領域と重なり合っていることによるnet遺伝子DNA配列での転写因子の競合奪取によるものであると結論付けられた。しかし,今年度のこの成績は特定のひとつのHIV分離株より得たnet遺伝子を用いた結果であり,HIVの多様性特にnet遺伝子領域の変異性の高いことを考慮すれば,他の分離株のnet遺伝子においても同様の検討が行なわれるべきである。現在までにウイルスキャリア-由来のHIV分離株のnet遺伝子をクロ-ン化しており、解析を急いでいるところである。 他方、HIVの潜伏感染の破綻には細胞外からの多くの因子の作用が明らかになっている。これらの作用はほとんどの例で上記LTR内のエンハンサ-に結合する転写因子を介するものであることが知られている。申請者らは、このエンハンサ-結合因子のDNAとの結合に結合因子蛋白分子上のSH基を介する酸化環元機構が調節的に関わり合っていることを発見し,現在その生化学的反応機構を調べている。
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