Research Abstract |
椎骨の形成過程は,従来,一個の体節に由来する椎板が,まず頭側半と尾側半とに2分し,それぞれが,隣接する別の体節由来の椎板の半分と癒合し,この癒合物が一個の椎骨を形成する,という,「再分節仮説」が有力であった.しかし,体節として現れる分節構造は,椎骨のそれと発生上無関係である,とする報告もある.脊椎動物の分節構造の発生を知るためには,体節の各部分の発生運命を実験的に調べる必要がある.そこで,今回,孵卵2.5日ニワトリ胚(20ー25体節期)の最尾方の体節の頭側半あるいは尾側半を,それぞれ、相当するウズラ胚の体節断片で置換し,その発生運命を調べた.もし,「再分節仮説」が正しければ,体節の頭側半が椎体の尾側半を体節の尾側体が椎体の頭側半を形成するはずである. 得られたキメラ胚を孵卵9.5日で固定し,連続切片上で移植ウズラ組織由来細胞をウズラ軟骨細胞特異的モノクロ-ナル抗体で同定した.1個のウズラ体節に由来する2断片の発生運命をしるため,そのそれぞれを移植された1対のキメラ胚を比較した.キメラ第1群では,移植頭側半体節由来細胞は,1個の椎骨内に限局し,移植尾側半体節由来細胞は,2個の椎骨内にわたって存在していた.キメラ第2群では,逆であった.この違いが,移植片の切断面の位置によることを,頭側あるいは尾側の1/3断片を用いた移植実験により確かめた.これらのキメラを調べた結果,体節の頭側半からは,少なくともキメラ第1群で示された椎骨の部分,すなわち,棘突起,椎弓,椎体の尾側部が形成される,一方,体節の尾側半からは,少なくともキメラ第2群で示された椎骨の部分,すなわち,棘突起,椎弓,椎体の頭側部,および横突起が形成されることがわかった。今回の,半体節を置換したキメラ胚により研究により,椎骨形成が「再分節仮説」の言うとおり,2分した体節半の癒合によるものであることが初めて実験的に証明された。
|