Research Abstract |
これまでの研究で,アルミニウム・トリイソプロポキシド(ATI)を原料とし,O_2雰囲気中で低圧水銀灯を光源として光CVDを行うと,アルミナ膜の堆積速度の増加とともに誘電特性が向上することが示された。本研究では,まず他の雰囲気としてN_2O及びH_2雰囲気での堆積を試みた。しかし,N_2O,H_2ともに,熱CVDでは堆積速度の増加が見られたものの,紫外光照射の効果はわずかであった。またH_2雰囲気では,何らかの分解生成物を通じて,装置にメモリ-が残る傾向があった。一方,誘電特性は光CVDによる試料では向上が見られた。 基板上の紫外光強度を増加させるために,水銀灯と基板の距離を小さくした(11cm→6cm)反応装置を新しく設け製作した。光強度は約3、4倍になっていると推定される。この装置で光CVDを試みた結果,基板温度260℃,N_2雰囲気で130A^^°/min,O_2雰囲気で200A^^°/minという大きな堆積速度が得られた。O_2流量20sccMで基板温度依存性を調べると,300℃付近で堆積速度が変化し,低温域で200A^^°/min,高温域で130A^^°/minと各々ほぼ一定であった。基板上の光強度が強くなったために,反応が充分に生じ,低温域で温度依存性がなくなったものと考えられるが,高温域で堆積速度が減少する理由は現段階では明らかではない。光CVDによる試料は,大きい堆積速度にもかかわらず,熱CVDによる試料より誘電特性は改善され,屈折率もわずかに大きい値を示した。これらのことは,堆積速度が大きくても,膜が疎になってはいないことを示していると考えられる。 光CVDの基礎デ-タとして,SOR光を用いて,ATI蒸気の真空紫外城の吸収を測定した。その吸収帯から,光CVDの光源として,重水素放電管などのより短波長の紫外光源の利用に興味がもたれる。
|