心筋細胞内CaまたはNaチャンネル機能の細胞工学的および遺伝子工学的研究
Project/Area Number |
02257203
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research on Priority Areas
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
豊岡 照彦 東京大学, 保健センター, 助教授 (00146151)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
杉本 恒明 東京大学, 医学部・第二内科, 教授 (60019883)
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Project Period (FY) |
1989 – 1990
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Project Status |
Completed (Fiscal Year 1990)
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Budget Amount *help |
¥1,800,000 (Direct Cost: ¥1,800,000)
Fiscal Year 1990: ¥1,800,000 (Direct Cost: ¥1,800,000)
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Keywords | Caチャンネル / CaATPase / 細胞工学 / 遺伝子工学 / 筋小胞体 / エンドセリン / PDGF / 心筋 |
Research Abstract |
筆者らは心筋および血管平滑筋細胞内Ca動態を規定する各種Caチャンネル,CaポンプであるCaATPaseおよびNaCa交換体を遺伝子レヴェルで解析するためその準備を進めているが、まだその結果を供覧する段階に至っていない。本報告では現在並行して行っている血管平滑筋内Caストアの筋小胞体からのCa2+の放出機構の発現機構に関する研究の進展を報告する。この研究の背景には心筋と血管のCa調節系には現在大きな相違は報告されていないので実験結果の解析の容易な血管平滑筋を用いて得られる結果は将来の心筋を用いる研究の重要なヒントとなると予想される。今回血管作動性物質としてエンドセリンー1(ET)を用いた。ごく最近の薬理学実験と遺伝子工学を用いた実験により心筋自身に対しETー1が陽性変力作用と変時作用を示し、また固有の受容体が心筋に発現しており、ETー1が何等かの作用を心にする事は確実であろう。またETは電位依存Caチャンネルに直接作用すると当初考えられたが、その後直接作用は無く、特有の受容体とIP_3による細胞内情報伝達系を介して細胞内Caイオン濃度を変化さると現在考えられている。 方法および結果 細胞内Caイオンぼ二次元観測法の詳細は既に昨年度報告した。今回は血管平滑筋が細胞増殖や分化の過程でその表現型が変わる事に注目し,(1)細胞分裂を極めて遅くするため0.5%のウシ胎児血清(FCS)を含む培養液、(2)この中の成長因子などを完全に取り除くため、全く血清を含まず、代わりにインシュリン等を含んだ完全無血清培養液、および(3)この系にPDGFを10ng/ml含んだ培養液の3種類の系でエンドセリン(ET)、バゾプレッシン(V)および40mMのK脱分極刺激を行った。なお今回も細胞内Caイオンの筋小胞体(SR)からの放出機構を解析するために前2者では細胞外液に生理的な1mMのCaイオンが存在する場合と、Caを加えず、かつCaイオンを完全にキレ-トするために1mMのEGTAを加えた場合を用いた。K刺激の時には電位依存性Caチャンネルの機能を確認し、かつ一端SRから放出されたCaイオンをSRに再度取り込ませる目的で1mMのCaイオン共存下で行った。 結果の要約および考案 (1)FCSを0.5%含む培養液で2日間培養後ETには細胞外にCaイオンが存在する時は全ての細胞が反応したが、その様式にはET添加後一過性の細胞内Caイオンの上昇相を示した後、平担な相の2種の反応を呈する群を約半数の細胞が示し、残りの半数の細胞は一過性の相を呈さず、後の平担相のみ呈した。(2)細胞外にCaイオンが存在しない時は一過性の反応のみ呈する約半数の細胞と全く反応しない約半数の細胞とが同一視野内に共存した。次に細胞外に1mMのCaイオンが存在し、かつ電位依存性Caチャンネルの阻害薬であるジルチアゼム30myuuM共存する時は、先の細胞外にCaイオンの存在しない時と全く同様一過性のCaイオンの上昇を示す細胞と示さない無反応の細胞とが共存した。 以上から(1)最初の一過性の反応は細胞内のSRから放出されるCaイオンの放出を、(2)次の平担相は、電位依存性Caチャンネルを通過して細胞内に流入するCaイオンを観測していると考えた。そして(3)その両方のCa動員系は約半分の細胞が占め、残りの半数は電位依存性Caチャンネルのみ有していると考えられた。次に細胞の分化の影響を観察するため、完全無血清培養液で細胞分裂を完全に阻止した場合、95%以上の細胞がETに反応し、PDGFを加えて増殖を起こさせた場合は全ての細胞が全く反応しなくなった。この際だった細胞のCa反応はETに対して選択的に示され、その他のK脱分局による電位依存性Caチャンネルによる細胞内へのCa流入の系やETと同じ細胞内信号伝達にIP_3を介すると考えられているVの場合には、こうした細胞周期の影響を全く受けず、無血清培養液でもPDGFの存在する時でも殆ど全ての細胞が反応を呈した。従ってETに対しては無反応でも電位依存性CaチャンネルとIP_3の動員系は完全に保持している事が示された。
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Report
(1 results)
Research Products
(4 results)