Budget Amount *help |
¥4,100,000 (Direct Cost: ¥4,100,000)
Fiscal Year 1991: ¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
Fiscal Year 1990: ¥3,100,000 (Direct Cost: ¥3,100,000)
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Research Abstract |
フランス語と日本語の名詞句の最大の相違は,フランス語では少数の例外的コンテクストや古フランス語の残滓を除けば,文中での名詞には必らず限定表現が伴うのに対し,日本語では限定表現なしで使われることが多い.この基本的事実についての詳細な対照研究により,日本語の裸名詞とフランス語不定冠詞句,定冠詞句の驚ろくべき機能的類似性を明らかにすることができ,かつそうした機能性類似性がディスコ-ス理解についての高次の認知的処理から導けるという見通しをつかむことができた.生成文法の枠組による日本語研究でも,日本語の特殊性が一致の現象の欠除から派生的に導けるという見解が出てきていることを考えるとき,当研究の結論との類似性は注目に値する.また日本語にはそもそも名詞句という統語カテゴリ-は不必要であるとする意見もあり,おおむねのところで当研究の結論と矛盾しない方向に,日本語研究は進みつつある.当研究では,冠詞の機能の解明に加えて,フランス語と日本語の指示詞の対照研究においても,日本語の「その」が定冠詞と極めて類似した用法を発達させつつあることも明らかにし,多くの日本語研究者から好意的な評価を受けている.さらに,コピュラ文と不定冠詞との研究においては,坂原が記述文・同定文と名付ける2つのタイプのコピュラ文の解釈が,冠詞の有無で決定されるという事実を発見し,フランス本国の研究者たちからも注目される事実であることが明らかになっている.しかしながら,依然,フランス語所有形容詞と日本語「その」との機能的類似は,未だ研究すべき点を残した.当研究のフランス語と日本語の限定表現のシステムを全体として考察する方法は,非常に有効であることが明らかであり,今後もいくつかの問題について,このアプロ-チから研究していくつもりである.
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