Research Project
Grant-in-Aid for General Scientific Research (B)
平成2年度に導入した高精度X線回折装置は平成3年度の改良も伴って装置としては順調に稼働している。平成3年度の研究として、従来から行われていた金属のマルテンサイト変態に伴う様々な現象の内、理論家が予測したFePd合金における「adapted phase」の探索を行ったが、それは存在しないとの結論に至った。そこで、本研究の最終目的である非金属での前駆現象に有無を調べるためにいくつかの物質の探索を行った。一番期待されていた物質Pb_3(PO_4)_2に関してはすでにフランスから同じ考えのもとで研究が発表されたので、平成4年度ではいくつかの物質で実験を行った。特に、金属との関連性から強弾性体であるLaNbO_4での相転移に着目して実験を行った。実験としてはまず、monoclinicな対称性を持つ低温相で(600)と(006)の散乱角の差を測定した。銅の特性線を使用した実験では室温でこの差が10度もあり、相転移温度768Kでの飛びも2度近くあり、温度履歴も80K近くあるという一次相転移であった。tetragonalである高温相で散漫散乱の存在を調べた。その結果、AuCd合金やNiTi合金で見つかっている異常な散漫散乱が低温相としてブラッグ反射が出現するであろう場所に見つかった。これは従来「goast lattice」と呼ばれていたものと同じで、相転移温度より高温の相で既に低温相の芽が発生していることを示唆している。金属の場合と違って、今回のような試料は均一性がよく転移温度の分布が非常に少ないので、相転移の機構に関して明確な議論が出来るものと思われる。現在、再現性の実験や、逆格子空間での分布を調べる実験を続行しており、結果の発表は少し遅れる予定である。