Research Abstract |
現在までの乱流状態に関する研究の進捗状況は,以下のとおりである。 第一に,熱対流によって発生した極めて強い乱流状態(10^7<Ra<10^<14>,低温ヘリウムのデ-タを用いた.)で,乱流による局所的温度のゆらぎの周波数スペクトラムの形に普遍的な性質が存在するかどうかを明らかにするため,新しい解析方法として,周波数スペクトラムにマルチフラクタル的スケ-リングの考え方を導入した.その結果,広い範囲のレ-リ-数のデ-タに関してスペクトラムは,一つの普遍的な形に重なる事が解かった.しかし,Ra>10^<11>以上ではスペクトラムを両対数プロットしたとき,2つの異なった傾きを持つ直線部分が現われることが新たに発見された.この成因は発達乱流におけるエネルギ-伝達,注入の機構と深く関わっており,現在理論家の間で解析が進められている.この結果は,既に発表済みである. 第2に,乱流のゆらぎの確率分布における間欠性の原因を明らかにするため,フィルタ-と確率分布を併用した新しい方法を提案した.通常の発達乱流や強い熱対流状態で観測される速度や温度のゆらぎの確率密度分布が指数分布あるいは拡張指数分布になることが極く最近の実験により認められつつあるが,これを説明する理論はまだない.実験的にこの起源を明らかにするため,どの波数(または周波数)成分が確率密度のどの部分に寄与するかを調べる方法として,波数(周波数)のバンドパスフィルタ-と確率分布の測定を併用することで,間欠性を表す分布の裾野の部分は主に散逸領域のゆらぎに由来し,ガウス分布に近い部分は慣性領域のゆらぎに起因することが明らかになった.また,個々の系の装置形状の違いなどに起因して普遍的でないスペクトルが得られる場合にも,慣性領域より低い波数(周波数)成分をカットすることにより,確率密度分布のより普遍的な部分だけを取り出せることを明らかにした.この結果に関する論文発表は現在準備中である. 実験装置に関しては,現在のところ水銀用の対流セルを製作し,温度制御装置,磁場発生装置,測定系等のテストは完了し,レ-リ-数10^8を目指して実験を進めている. また,弱い乱流状態(時空カオス)における普遍性を探求するため,液晶の電気対流系を用いて,自発的に発生する非線形波動状態や,局在した振動の引き込み状態の生成及び崩壊のメカニズムを変調の実験や局所波数の動的測定から明らかにした.この結果は現在,発表準備中である.
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