Research Project
Grant-in-Aid for General Scientific Research (B)
1.一側腎摘出後のウサギ肝に、術後3〜5日目に尿細管細胞の増殖を促進あるいは抑制する物質が見つかった。これらのうち増殖促進因子は分子量15-20KDa、等電点は陰イオンクロマトグラフィー上ほぼ中性領域にあり、単離ウサギ腎皮質尿細管細胞ばかりでなくLLC-PK_1やLLC-RK_1といったブタやウサギの株化尿細管の増殖をも促進したが、正常ラット肝実質細胞やBalb/c3T3線維芽細胞の増殖には影響なく、この因子は腎尿細管細胞特異的に作用する可能性があり、将来急性腎不全の治療への応用も考えられる。2.腎それ自体に様々な増殖因子が存在する。それらのうち上皮成長因子は代償性腎成長において早期一過性残存腎で増加し、抗EGF抗体によって尿細管細胞の過形成が抑制されたことから、代償性腎成長において上皮成長因子(EGF)は尿細管細胞の増殖に大きく関与していると考えられる。トランスフォーミング増殖因子-β(TGF-β)は、尿細管細胞の機能を高めながらその増殖は抑制する。この因子は尿細管細胞自身が産生しており一側腎摘出後の過形成が終了する頃近位尿細管細胞に認められることから代償性腎成長のブレーキとして、あるいは肥大に関与している可能性がある。塩基性線維芽細胞増殖因子は尿細管細胞の増殖のみでなく腎癌細胞の増殖をも促進する。さらにこの因子は腎癌組織で強く発現しており、腎細胞癌のオートクリン増殖と血管新生に関与していることが示唆された。肝細胞増殖因子は肝再生の強力な促進因子として知られているが、この因子は肝実質細胞ばかりでなく、腎尿細管細胞の強力な増殖促進因子であり、しかも急性尿細管壊死後その活性もmRNAの発現も著しく増加することから、尿細管細胞の再生に大きく関与していることがわかった。
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