Research Abstract |
実験材料としてウシ小腸上皮粘膜より上皮区分のホモジネ-トを作り,Sephadex,Column chromatography,HPLCなどを用いて有効区分の分離・精製を試みた.その結果,Sephadex G50による第四分画区分に有効区分が分離されることが認められた.すなわち,基本培地にこの第四区分を添加して,コラゲナ-ゼ潅流法によって分離したラット肝実質細胞を培養すると,肝細胞は良く増殖し,次いで細胞は集合・配列して重層コロニ-を形成し形態上ミクロ肝臓様の発達を示した.このようにして形成された人工ミクロ肝臓からラットアルブミンの生成分泌が認められ,又そのホモジネ-トからGOT,GPT,TATなどの酵素活性が測定され,明らかに肝機能の発現が認められた.さらに,この有効区分を肝部分切除ラットの腹腔内に注射すると,残余肝細胞のDNAならびにRNA合成が高まり,さらにBrDUの取込が増加するなど明らかに肝再生の促進効果が示された.又,ラットにCCl_4,Dーガラクトサミンなどの劇症肝炎誘発物質を投与すると,肝炎ー肝硬変に進行する過程でGOT,GPTなどの酵素やビリル-ビンなどの肝内生成物質の大規模な血清内逸脱や,肝組織内のグリコ-ゲン顆粒の消失,肝細胞の壊死など著しい肝障害特有の症状が示されるが,この際,有効区分の投与を事前又は併用投与の形で行なうと,肝内酵素ビリル-ビンの血清内逸脱は著しく低下し,肝組織内症状も進行が抑制,この有効区分投与による病変の修飾が認められた.この有効区分をColumn chromatography,HPLCなどでさらに分画した結果,有効因子は何れも分子量5000〜10000の2促進因子と1制御因子から成り,これら3因子が協同して肝実質細胞の増殖促進と分化,肝障害の修復ならびに修飾に関与することが明らかとなった.さらにこの中の1促進因子はアミノ酸分析の結果,プロリンを多く含むProlineーrich peptideであることが認められた.
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