Research Abstract |
今回の研究は,将来の『文徳実録』全文の注釈作成に備えての基礎的資料の収集を第一の目標とし,その分析を少しでも進めることを第二の目標とした。まず第一の目標に関しては次のような成果があった。 1.国立国会図書館,国文学研究資料館,国立公文書館,東京大学総合図書館及び史料編纂所,名古屋市鶴舞中央図書館及び蓬左文庫の各所において,『文徳実録』写本・版本(特に書き入れ等のあるもの)及び注釈書類を関覧調査し,今後の注釈に資すると思われるものの焼付写真を多数架蔵することができた。 2.逐条件検討に資するための関連資料として,平安時代初期に関する史料・索引・研究書ならびに研究論文の類を,現物または複写の形で,多数架蔵することができた。 3.以上の作業と併行し,『文徳実録』記事の収録年代に関する史料を収集し,編年順に整理して「係年史料」要目を作成した(裏面の研究発表爛,参照)が,これについてはなお,今回入手した資料等による補訂を続けて行く予定である。 次に第二の目標については,すでに作成してあった訓読文草稿の再検討を兼ねて,さしあたり朝日新聞社本『文徳実録』の頭注の批判的検討に着手し,現在も継続中である。本文には難解な語句を重ねた長大な文章も少なくなく,かなりの困難もあるが,すでに一部検討した段階でも,朝日本頭注を訂正ないし補足すること多く,徐々に新知見も得られつつある。今後,この作業を踏まえた上で,訓読文の整備及び注釈の作成に着手したいと考えている。 なお,当初予定していた特殊な原稿用紙作成は,作業手順等を改めて検討した結果,一応見送ることにした。
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