Research Abstract |
民法から分化し、特化した商法の出現は、ある意味において、中世末近世初頭のヨ-ロッパ都市国家においてであるといえよう。いうまでもなくそれはロ-マ法を継受したものであり、当時の経済の進展、商工業の展開に触発されたものである。また逆に,商法の生成が近世経済の発展を促した。 当時の商法の生成に大きく寄与したものの1つに、ジェノヴァ,ロ-マの最高法院の判決を挙げることができる。 本研究は,ジェノヴァ最高法院の商事なかんずく会計をめぐる判決を管見し,もって商法会計規定の源流を探らんとするものである。 ジェノヴァ最高法院の創設は,1528年のAndrea Doriaの制度改革に遡る。さて商事に関する1528年から,1582年に至る判決は,1582年に,mareo marcantonio Belloniによって,公刊された。また,商法に関する体系書を初めて著したBenvenuto Stracchaによっても出版された(1592年,1621年,1669年)。 判決にみられる法定会計報告は,ロ-マ法のそれを継受したものであり,「正確にして,誠実な,信憑のある会計報告 bonam,veram et legalem rationem redere」と呼ばれた。そして,それは,(1)収支を証する受領書等cautiones instrumentaの証憑の吟味legendas rationes(2)金額の検証computondas offerae rationes(3)現金残高の返済reliqua solvere(4)勘定の締切subscribere rationesの4項目から成るものとされ,利益分配の前提となりえた。 次に判決における貸借対照表bilanciumの分配損益決定機能の法的効力についてみた。(判決CLXXVI) 原始商法(フランス商事工令)の源流の1つたるジエノヴァ最高法院判決における会計職能をみるをえた。商法会計に示唆するものと考える。
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