Budget Amount *help |
¥1,900,000 (Direct Cost: ¥1,900,000)
Fiscal Year 1990: ¥1,900,000 (Direct Cost: ¥1,900,000)
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Research Abstract |
振動子が溶媒の構造,極性,水素結合などの環境因子によってどのような影響を受けるかを明らかにすることは,溶液中の反応のダイナミックスを理解するために必要である。これまで純液体での振動緩和の研究は行われてきたが,溶液,特に電解質溶液中での研究はほとんど無かった。大きな対力チオンとの組み合わせによって,硝酸塩の溶解度が水中のみならず,アセトニトリル中でも測定可能となり,振動緩和に対する引力的相互作用としての水素結合の影響を明らかにすることができた。 (1)振動緩和時間は流体力学的モデルから予測される溶媒粘度依存性よりかなり小さい。流体力学的モデルによれば,粘度指数は1であるが,実験から0.2〜0.3であることがわかった。その意味で,振動緩和に対する溶媒分子の衝突の効果を粘度から見積る,Oxtobyの流体力学的モデルは非常に大きな問題を含んでいると言える。 (2)溶媒分子の極性や結合の双極子モ-メントなどの局所的引力相互作用は振動緩和速度を大きくすることがわかった。水,重水,アセトニトリルでの結果を比較することによって,イオンの振動緩和に対する水素結合の寄与が非常に大きいことが明らかとなった。 (3)温度と溶媒の種類を変えることによって,等粘度条件下での振動緩和速度の実験を行うことが可能となった。粘度一定の条件であっても,たとえば,水中での振動緩和はアセトニトリル中での緩和よりも約2倍大きいことが判明した。この事実は,これまでの振動緩和のモデル(溶媒の粘度だけを考慮)が不十分であることを示すものである。
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