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¥1,800,000 (Direct Cost: ¥1,800,000)
Fiscal Year 1990: ¥1,800,000 (Direct Cost: ¥1,800,000)
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Research Abstract |
1.超安定炭素陽イオンの反応試剤としての応用面の検討. 超安定性をもつ炭素陽イオンとして最近我々が合成した,3個のビシクロ[2.2.2.]オクテン環の縮環したトロピリウムイオン(1)を選び,反応性に富むアニオン種との塩形成の可能性について検討した。その結果カチオン1は求核性の高いN^ー_3,AcO^ー,SO^ー_3,PhO^ー,CO^ー_3などのアニオン,また酸化力をもつCrO^ー_4などのアニオンとも塩を形成し得ることが明らかとなった。これらは有機溶媒に可溶であるが,反応試剤としての応用面を検討するには至らなかった。 2.超安定炭素陽イオン1を用いる双極性分子の合成.カチオン1と種々の安定な炭素陰イオンとの反応を行ない,1が共役酸のpK_a≧11の炭素陰イオンとは共有結合を作り,≦8.3の陰イオンとは反応しないことが明らかとなった。特に最も安定な炭素陰イオンである"Kuhnの炭素陰イオン"との組み合わせにより,新しい「炭化水素塩」を合成した。さらに1のメチル誘導体およびシクロヘプタトリエン体から,3個のビシクロオクテンの縮環したヘプタフルベンおよびトロポンを,強く分極した安定な結晶として単離することに成功した。 3.新しいシクロオクタテトラエン(COT)のカチオン種の合成.4個のビシクロ[2.2.2]オクテンを結合させた後,還元的に環化するという当研究室で開発した方法により,このビシクロ骨格の縮環した新しいCOT誘導体(2)を合成した。2は金属カリウムで2電子還元すると新しいジアニオン2^<2ー>に変換された。逆に2をSbCl_5またはNO^+などで酸化すると,空気中室温でも安定な緑色結晶が単離され,これが2のカチオンラジカル塩であることが,ESR,電子スペクトルおよび元素分析により明らかとなった。これはCOTのカチオン種が室温で観測のみならず単離された初めての例であり,ビシクロ炭素骨格の縮環効果を如実に表している。
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