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¥1,400,000 (Direct Cost: ¥1,400,000)
Fiscal Year 1990: ¥1,400,000 (Direct Cost: ¥1,400,000)
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Research Abstract |
酸化物イオンとカルボン酸イオンとで架橋したRu複核,三核錯体は,骨格構造を保持したまま3ないし4個の一電子酸化還元過程を示す.この錯体を基にしてさらに多段階の酸化還元過程を示すディスクリ-トな錯体を合成できれば,基礎的ばかりでなく応用面からみても有用な物質の開発につながる.本研究では,二つのアプロ-チでそのような多核Ru錯体の開発をねらった. 1.三核錯体の連結による多段階,多電子系の開発. オキソーアセタト架橋三核錯体をピラジン(pz)で架橋した一般式が次のように表わされる三核錯体の二量体,[{Ru_2(μ_3ーO)(μーCH_3COO)_6(L)_2}(μーpz){Ru_2(μ_3ーO)(μーCH_3COO)_6(L)_2}]^<2+>(Lはピリジン誘導体),をいくつか合成した.これらは8電子系で少なくとも6個の酸化還元過程が観測された.各三核ユニットはRu_3の形式酸化数が(II II III)から(III IV IV)までの状態を取るが,pz架橋を通しての相互作用により還元側の電位に分裂が起こり,その程度はピリジン誘導体LのpK_aが大きいほど大きかった.また,異なるpy誘導体を含む二量体の合成にも成功した.このものは,二つの三核錯体の酸化数が異なる二量体の安定領域が大きいので,定電位電解吸収スペクトルを測定することが出来,(II II III)ー(II III III)型二量体で両三核ユニット間の相互作用を示す新しい近赤外部吸収帯を観測できた. 2.酸化還元活性配位子を含む三核錯体. NーMethylー4,4'ーbipyridinium ionをL^+とする三核錯体を合成した.この錯体は,各配位子の2電子過程を含む10電子系で少なくとも7つの可逆な酸化還元過程を示した.また三核錯体骨格を通じての配位子の酸化還元過程の分裂が観測された.この分裂は対応するRh三核錯体では見られなかった.またこのRu三核錯体は,配位子との電荷移動吸収帯で著しい溶媒依存性を示した.以上,当初目的としたいくつかの錯体のうち特に酸化還元反応性に特徴を持つ新しい数種のRu多核錯体の合成に成功した.
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