Research Abstract |
ミオシン・サブフラグメントー1上にはリジン残基が連続するLys・Lys・Gly・Gly・Lys・Lysというアミノ酸配列(リジンクラスタ-)があり種々の研究の結果アクチンと結合する部位の一つであることが分っている。筋収縮中のミオシンとアクチンの相互作用を分子レベルで理解するためにはこの部位とアクチンとの相互作用の本質を知る必要がある。本研究では上記配列と電気的に相補的となるペプチド,Asp・Asp・Gly・Gly・Asp・Asp・Aspを基本として,両端にケイ光標識できるようなアミノ酸残基をつけたものやC末端側からの配列が相補になるもの,さらに負電荷をもったペプチドというだけの効果を差引くためにAspとGlyをランダムに配置したものをつくり,これらのペプチドがミオシンーアクチン相互作用にどのような影響を与えるのかを調べた。 (1)基本ペプチドはミオシンとアクチンとの結合を阻害しない。このペプチドがミオシンに結合していてもアクチンはそのミオシンと結合できる。これはアクチンとの結合に与かるものはリジンクラスタ-だけではないと考えれば当然かもしれないが、静電気力はタンパク質間相互作用の中で最も強いものであるからもう少し差が出ることを期待していたのであった。しかしミオシンがATPを分解している時にこのペプチドが存在するとアクチンとの結合が弱まることが分った。したがってリジンクラスタ-はミオシンがATPを分解し張力を発生しようとする時にアクチンと相互作用するということが示唆された。 (2)単に酸性ペプチドというだけではミオシンとアクチンの相互作用阻害効果はない。Asp・Gly・Asp・Gly・Asp・Gly・Asp・Glyというペプチドを合成し,ミオシンに与えてみたがアクチンとの相互作用には何の効果もなかった。従って,基本ペプチドの作用が単なる酸性ペプチドの効果ではなくリジンクラスタ-に対する特異的効果であることが証明された。
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