Budget Amount *help |
¥2,000,000 (Direct Cost: ¥2,000,000)
Fiscal Year 1990: ¥2,000,000 (Direct Cost: ¥2,000,000)
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Research Abstract |
申請後の研究進捗を考慮し,試料導入処理装置(特注型)の設計を改善した.技術面と予算面について,製造会社との折衝に時間がかかり,発注が予定より約2ケ月遅れた.これにより本装置による研究は未着手であり,成果を出すに至っていない.この間,設計と並行して現有装置による研究を進め,いくつかの成果を得た.その代表的なものは次の通りである.不純物としてAgを含むKCI単結晶は400K付近に強い熱刺激エキソ電子放出(TSEE)と熱ルミネッセンス(TL)を生じることが知られている.このTLの主成分は275nm光で,これはAg^+の励起状態Ag^<+*>の放射減衰による発光であることはほぼ確立しているが,Ag^<+*>の生じる過程については2種類の機構が提案されている.ひとつはBohun等によるもので,Ag^o_kから解放された電子が伝導帯を通じてAg^<2+>と再結合してAg^<+*>生じるというもので,彼らは400KのTSEEは伝導帯に励起された電子で仕事関数以上のエネルギ-をもつものが結晶外に放出されているという,いわゆるMaxwellーtail型の放出機構を提案している.一方Sridaran等はAg^o_kから隣接のV_k中心への電子のトンネルによりAg^<+*>が生じるという機構を提案している.この場合,伝導帯には電子が存在しないのでBohun等による放出機構とは対立する.この点を明らかにするために,KCI:Agについて100〜600KでTSEE・TLグロ-曲線の同時測定,各TLピ-ク分光スペクトル,optical repopulation等を測定した.それらの結果から以下の機構が妥当であるとの提案をした.400KになるとAg^o_kが不安定になり電子を解放する.電子は伝導帯を移動し,Ag^<2+>と再結合してAg^<+*>を生じる.Ag^<+*>の放射減衰がTLの275nm成分であり,この過程と競合するAugerーlike的な電子放出により400KのTSEEを生じる.なお,試料導入処理装置が稼働次第,それにより得られる知見をもとにさらに研究を発展させる予定である.
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