Research Abstract |
まず,検討の結果として得られる数値がそのまま安全側の数値となるよう,人体寸法の統計上の上限値(99.9パ-センタイル値)を持つ3歳児および6歳児の二次元ダミ-を作成した。このダミ-を用い,種々の断面形状をした手摺部位に対してよじ登れるか否かを机上で検討し,その寸法上の境界を求めた。得られた結果は,計50数枚のグラフ上に表現した。 一方,机上の検討に過ぎないという上記検討方法の弱点を補うため,その結果が実際の幼児のよじ登り動作と整合するかどうかを確かめた。すなわち,幼児が自然によじ登っている姿を都内数カ所の児童公園でビデオ撮影し,画面から必要寸法を拾い出し,上記と同様の意味の寸法となるよう補正を加えたのち,上記検討結果のグラフ上にプロットした。この結果,両者はかなりよく整合していることが確認され,検討結果は現実の問題にも十分適用できるものであることが明らとなった。 そこで,この検討結果を用いることにより,現行法規・基準類に定められている手摺状部位の寸法条件が妥当であるかどうかを検討した。この結果,現行法規・基準類は概ね妥当といえるものの,部分的には不十分な点のあることも発見された。例えば,いわゆる「足がかり」までの高さのみではよじ登りの可能性のすべては判断できず,「足がかり」の奥行や手摺の総高さとの関係も合わせて判断しなければならないという点などである。 以上,この研究により,幼児のよじ登りを防ぐための手摺状部位の寸法要件が定量的にとらえられ,また,これを用いることにより,現行法規・基準類の妥当性の程度が確かめられた。
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