Project/Area Number |
02650436
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Research Category |
Grant-in-Aid for General Scientific Research (C)
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Field |
建築史・建築意匠
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
藤井 恵介 東京大学, 工学部, 助教授 (50156816)
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Project Period (FY) |
1990
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Project Status |
Completed (Fiscal Year 1990)
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Budget Amount *help |
¥1,700,000 (Direct Cost: ¥1,700,000)
Fiscal Year 1990: ¥1,700,000 (Direct Cost: ¥1,700,000)
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Keywords | 三条白川房 / 十楽院 / 熾盛光法 / 伝法灌頂 / 結縁灌頂 / 仏教建築 / 住宅 / 六室精成 |
Research Abstract |
鎌倉時代の天台宗の代表的里房である三条白川房は、熾盛光堂を中心とした建築群をもち、天台宗の基本的な重要法会である熾盛光法、そして伝法灌頂が、熾盛光堂で恒例の仏事として勤修されていた。そこでは建築と仏教行事との機能的一致を克明に明らかにすることができた(拙稿「三条白川房の熾盛光堂についてー中世天台宗の密教建築研究」『建築史論叢』中央公論実術出版昭和63年)。 本年は、三条白川房以後の天台宗の代表的子院である十楽院の建築の研究を実施した。十楽院には主要な建築として本堂(寝殿とも呼ばれる)、受用阿弥陀院などがあった。十楽院では三条白川房での恒例の仏事であった熾盛光法・伝法灌頂・結縁灌頂が引き続いて勤修されたことが確認できる。建築の形式という視点にたつと、十楽院の本堂は禅宗の子院である塔頭の方丈にしばしば見られる形成である六室構成をもっており、従来住宅系建築に見られる特徴的な平面と考えられていきている。十楽院本堂が当時において仏堂であると同時に住宅としても理解されていて、「寝殿」と呼ばれる理由もここにあることが確かである。本建築では本来仏堂建築の内部で勤修されていた仏教儀式を住宅系の平面のなかに極めて巧妙に舗設しておこなっているので、住宅系建築における空間の融通性がかなり高いことが確認された。従って、仏教寺院における住宅と仏堂の間には、仏教儀式による限定的な区別はなく、空間の舗設の自由さが逆に相互の関係の親密さを保証するのであると想定されよう。建築を造り上げる時、形成を住宅系あるいは仏堂系とするのか、それを選択する場合の契機については充分明らかではないが、少なくともそれを選択することの意味が、仏事の勤修を目的とするという理由には依らないことが明らかとなった。
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