Research Abstract |
本研究の目的は石英の熱ルミネッセンスを測定し,熱発光強度から地熱活動の時期とその規模を推定し,地熱探査への利用の可能性を明らかにすることであり,この立場から熱ルミネッセンスの研究は皆無である。有望な地熱地域として新エネルギ-総合開発機構により地熱開発のための調査が行われている秋田県小安地域を研究対象地区とした。 石英結晶を放射線で照射すると,本来は占有が許されない準安定準位に電子が捕獲される。これを加熱すると電子は安定な準位に遷移し,過剰のエネルギ-を光として放出する。発光量は準安定準位の電子の数,すなわち被爆した放射線量に比例する。地中の鉱物はほぼ一定量の自然放射線の照射を受けるので,発光量は地質年代の測定に利用されている。しかし古い年代の地層でも地熱活動により一但加熱されると,それまで蓄積されて来た捕獲電子は放出され(ゼロセットされる)ので,地熱温度が励起電子の蓄積可能な温度に低下するまで蓄積は開始しない。よって地熱地域の鉱物の熱発光量と自然放射線量を測定すれば,測定地点がいつまで加熱されていたかを知ることができるであろう。 冷却後の地質年代を測定するため,石英に人工照射を行い,照射線量と発光強度との関係を求め,さらに地中の年間放射線量を測定した。 その結果以下のことが明らかになった。(1)本地域の石英は過去に地熱によりゼロセットされ,その後地温の低下とともに電子が蓄積された。(2)熱源から離れるほど地質年代が古くなっており,現在の地下の地温の低下とほぼ調和的である。(3)この傾向は地表付近にまで現れる。 以上,熱ルミネッセンス法による冷却年代が地表付近の試料からも推定できるので,本方法は地熱開発の初期調査に有効な手段として利用できると期待される。
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