Research Abstract |
平成元年度にひきつづき,次の結果を得た。 1.内耳の厚切り切片を作成することにより、蝸牛らせん器に走る神経線維の走行を走査型電子顕微鏡で観察する方法を確立した。 平成元年度の科学研究費の補助をうけ,セロイジン色理内耳の厚切り切片と,走査電顕で観察する方法をはじめて試みたが,今年度はこの方法と定常的に応用し,ネコ,モルモット,イヌのどの種でも使用でき,有用であることを確認した。 2.この方法により,ネコらせん器内神経線維の,発育によるパタ-ン変化を今年度も調べた。ネコの蝸牛は生下時にはまだ完成していないが,4週でほぼ完成する。この間の各時期のネコの匹数を増し,成熟にともなう神経線維のパタ-ンの変化をさらに追求した。未熟さを示す付見として,遠心神経線維であるトンネルらせん神経束の走行変化がみつかった。未熟な段階ではトンネル底中央部を走るが,成熟にともない,内柱細胞の基部に移っていった。また完成した内耳の外有毛細胞の基部には,ブドウの房状の神経終末がみられたが,93グラムのネコでは,糸状の神経終末が観察された。神経終末の走査電顕による観察は,全体のパタ-ンを見るのにすぐれており,現在なを検討を続行している。 3.イヌヤ家兎とネコではらせん器円の神経走行が,かなりちがっている。種差による分布パタ-ンの変化も観察し,家兎について発表した。 4.光顕による観察はなだ着手できないでいるが,透過型電顕については,ネコ,ヒトの標本について現在観察中である。透過型と走査型電顕を同一個体の内耳に応用することで,知見の総合目理解が深まることと考えられる。
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