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¥1,700,000 (Direct Cost: ¥1,700,000)
Fiscal Year 1990: ¥1,700,000 (Direct Cost: ¥1,700,000)
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Research Abstract |
本研究では,ATP合成酵素の一次構造に基づいた高次構造と機能の相関について次の2つの方法によって知見を得ることを目的とした。(1)大腸菌ATP合成酵素の機能欠損変異株より,機能の回復した戻り変異株を分離し,この変異を塩基配列レベルで明らかにする。(2)ATP合成酵素に対するモノクロ-ナル抗体を分離調製し,抗体認識部位を一次構造上で明らかにし,抗体のATP合成酵素に対する機能及び分子集合過程に対する効果を観察する。以上の2点に対して次の成果が猿られた。(1)本酵素の活性中心を有するβサブユニットのSer174残基がPheに変換し機能を失った変異株から戻り変異を多数分離した。PCR法を用いた新しい変異同定法を用いて,元の欠損変異が保たれた形で,新たにAla295Gly149,Lev400,Asu158,Ale167が変異し機能が回復することが明らかとなった。したがって,Ser194とこれらの残基がそれぞれ近傍に位置し,ATPaseの解媒活性に重要であることが示唆された。これまで推定された触媒部位(140〜350残基)の中及びこれとははずれる400残基に至る領域が,実際高次構造上相互に接近している可能性を,本研究成果は初めて示したものであり,重要な成果である。同様な手法を用いて,別の2種のβ変異株についてももどり変異を解析し,それぞれ残基の空間的配置について知見を得ることができた。第2のアプロ-チであるモノクロ-ナル抗体については,βサブユニットに強く結合する2種の抗体産生細膜を分離した。この2種の認識部位について,βサブユニットの部分ペプチドを産生する発現ベクタ-系を作製し詳しく解析した。その結果,これら抗体はβのN端1ー114残基中に認識部位をもち,ATPase活性は阻害せず,分子集合したATPaseに結合する。以上のことから,βのN端1ー114残基は,ATPase分子の外側に位置し触媒活性には関与しないことが明らかとなった。
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