Research Abstract |
情報システム論的な観点から,植物の相互コミュニケ-ションについて調べることを目的とし,申請書実施計画にそって研究を行なった.試作した100chの格子状電極,ならびに振動電極による全自動2次元電位分布計測装置を用いることにより,ニンジンのカルス細胞塊や小豆,カイワレ大根,車軸藻節間細胞などを対象に,発生,分化,生長などの形態形成と環境の関係,さらに車軸藻相互間や根相互間における関係を調べた.主たる結果として,根の周りには根に沿ったマクロな電場以外に,微小領域からなるミクロレベルの電場が重層構造に存在することを見出した.また,この電場は動的であって形態形成や自己修復過程において,不安定化したり秩序化したりする.とくに,個体間で根を接近させると電場パタ-ンの対称性が破れた後に,新たな場を形成し,根の接触を回避する結果を得た.車軸藻やカルスの再分化過程においても同様の電場パタ-ンの変化が存在する.これら一連の結果は,電場パタ-ンが一種の操作情報として環境情報と植物をつなくインタ-フェ-ス的な働きをすることを示唆するものであり,場の解体ー再構築過程により内部状態,例えば細胞間や組織間の関係がコ-ディネイトされると推察される.また,場の重層構造化は植物の情報処理における階層間の関係性に重要な役割を果たしている可能性がある.一方、苗床に観葉植物のカポックを2個体に植付け,音刺激を与えた場合の両者の葉表面の生体電位変化を調べた.また,ブナ原生林の幹,枝,葉を対象としたフイ-ルド実験用電位計測装置を試作し,自然環境下におけるブナ相互間のコミュニケ-ションについても実験を行なった.しかし,これら生体電位変化(AC成分)はかなり複雑で,コミュニケ-ションを示唆するような結果は今の所得られていない.なお,以上の研究を遂行する上で,計測制御,デ-タ処理にパソコンはじめ全ての設備備品を十分に活用した.
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