Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
張 文霞 中国科学院, 昆明動物研究所, 教授
林 飛桟 台湾, 中央研究所・動物研究所, 副研究員
汪 シンチン 中国科学院, 動物研究所・昆虫分類研究部, 教授
張 慧羽 台湾, 台湾大学・生物系, 助手
彭 統序 中国科学院, 広東省昆虫研究所, 講師
陳 華中 中国, 〓旦大学・遺伝学研究所, 教授
談 家おん 中国, 〓旦大学・遺伝学研究所, 教授
青塚 正志 東京都立大学, 理学部・生物学教室, 助手 (40106604)
木村 正人 北海道大学, 理学部・動物学教室, 講師 (30091440)
渡部 英昭 北海道教育大学, 札幌分校・生物学研究室, 助教授 (10167190)
布山 喜章 東京都立大学, 理学部・生物学教室, 助教授 (20087133)
戸田 正憲 北海道大学, 低温科学研究所・昆虫研究部門, 教授 (40113592)
汪 しん ちん 中国科学院, 動物研究所・昆虫分類研究部, 副研究員
孫 暉 東北師範大学, 生物系, 助手
胡 楷 海南大学, 副学長・生物系, 教授
李 国強 新〓大学, 生物系, 助教授
庚 鎮城 〓旦大学, 遺伝学研究所, 教授
談 家つぉん 〓旦大学, 遺伝学研究所, 教授
別府 桂 信州大学, 教育学部・志賀自然教育研究所, 教務員 (80156984)
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Research Abstract |
1983年以来継続している我々の日中共同研究は,広大な中国本土のショウジョウバエ相の全てを明らかにすることを目的としている。平成2年度までに,ショウジョウバエの豊富な多くの地域で採集を行ってきたが,平成3及び4年度には,従来ほとんど調査が行われていなかった東北地区と華中域を中心として採集を行うと共に,中国本土と密接な関係を持つ台湾で近縁種を採集し,日本産も含め比較検討することを目的しとた。 (1)中国産ショウジョウバエの系統分類学的研究北川・戸田・渡部・汪は,従来の調査では空白となっていた東北地区と華中域を中心に採集を行った。四川省峨眉山で中国科学院動物研究所の成都支所の応援を受け,山頂近くから麓まで十分な時間をかけて採集を行った。戸田・渡辺・汪は,湖北省の自然保護林である神農架地区で採集を行い,多くの成果を得た。それらの採集標本は,北京の中国科学院動物研究所に持ち帰り,種の分類・同定を行った。一部分類困難な標本については汪が日本に持参し,十分な文献を参考に共同で種を同定した。 平成3年度には,新種48,中国新記録種30,中国内分布新記録80を確認した。また,平成4年度には,新種137,中国新記録種81,中国内分布新記録種166を確認した。1983年以来本研究によって,中国に産するショウジョウバエの総数は,新種163を含め既知種が378,末同定種を含む合計は697種に達している。ちなみに,日本産は270種である。 平成5年度に華東域で採集した標本は陳が,華南域で採集した標本は張が,分類困難な標本をそれぞれ日本に持参し,戸田・渡部等と共同で種の分類・同定を行った。戸田は広州を訪問し,採集してあった標本の分類・同定を行った。 (2)台湾産ショウジョウバエの系統分類学及び進化遺伝学的研究渡部は台湾の採集によって,これはobscura群に属する新種を発見したが,obscura群の本来の分布からみれば生物地理学的に画期的な発見である。集団遺伝学的な解析によって,従来のどの種とも強い生殖的隔離のあることから,新種であることは確実である。 木村は,台湾産を含めDrosophila takahasii亜群に属するD.pros+ipennis,D.takahashii,D.triluteaの3種を用いて温帯と亜熱帯に生息する同種の気候に対する適応の違いを調査した。温帯産の種は,光周期性生殖休眠が低い温度の方にシフトしていることが明かとなった。 (3)台湾産ショウジョウバエの分子遺伝学的研究北川・青塚は,台湾の林・張と共同して,日本産と台湾産のオオショウジョウバエ合計117系統について,ミトコンドリアDNAの12種の6塩基認識制限酵素による切断部位を解析し,地域集団間の分子レベルでの比較を行った。その結果,合計18種類のミトコンドリアハプロタイプが発見され,高度に多型であることがわかった。ハプロタイプ間の塩基置換率を推定した後,UPGMA法によりハプロタイプ間と地域集団間の類縁関係を示す系統樹を作成した。それによれば,台湾産と日本産のオオショウジョウバエの間には,両者を区別できる遺伝的分化は存在しないことが明かとなった。現在,日本産と台湾産のオオショウジョウバエ亜群に属する他の種も含め,分子進化遺伝学的解析を行っている。
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