Research Abstract |
我々が分離した7株の温度感受性変異Abelsonマウス白血病ウイルスは、軟寒天中でのコロニ-形成能は、温度感受性(ts性)を示すが、形態変化も、autophosphorylationで見たtyrosine kinase活性も、ともにts性を示さない、ユニ-クなts mutantである。このうち、5株のウイルス・ゲノムの全塩基配列の決定から、次のような10ヵ所の変異が見い出された。A(713番目,T→A),B(741番目,C→T),C(816番目,A→G)〔以上は、LTRとgag間のuntranslated region内〕、D,E(1224と1226番目,G→CとC→G,この変異で、Gly→Arg),F(1511番目,G→A,Asp→Asn)、G(1633番目,G→A,Pro→Pro)〔以上は、gag内〕、H(2763番目,A→G,Leu→Arg)、I(3264番目,G→T,Ser→Ile)、J(3347,3348番目のACのdeletion→3526番目にtermination codon出現)〔以上は、abl内〕。5株のts mutantnがもつ変異は、tsOS59(B,C,D,E,G,H,J)、tsOS110(A,C,D,E,F,G,H)、tsOS119(C,G,H)、tsOS121(C,G,H,I)、tsOS156(C,G,H)であり、C,G,Hは、5株ともに共通に、存在した。上記10ヵ所の変異部位のうち、ts性に関与する変異を決定するため、wild typeとts OS59との間で、restriction fragmentを相互に入れ換えたハイブリッド・ウイルスを作製し、軟寒天中でのコロニ-形成能のts性を解析したところ、Gの変異のみをもったハイブリッド・ウイルスが、ts性を示した。よって、abl geneのkinase domain内の、今までに報告のない変異Gが、ts性に関与していることが判明した。tsOS119,tsOS121,tsOS156を比較した時、許容温度で、最もトランスフォ-ム能の強いtsOS121のみが変異Iをもつので、このabl gene内の変異部位が、トランスフォ-ム能に重要な部位であると考えられた。現在、このts vーablを導入した骨髄細胞を、マウスに骨髄移植し、どのような疾患(おそらく、ある種の白血病)が起こるが、解析中である。
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