Research Abstract |
マイクロ波照射の影響を,熱作用と熱作用以外の作用とに分けて評価できるよう,マイクロ波の量・効果関係と温熱の効果を検討した。 まず,マイクロ波照射あるいは温浴がマウス胎仔の神経管形成に及ぼす影響を比較,検討した.妊娠7または8日のSlc:ICRマウスに周波数2.45GHz,電力密度15,20,25または30mW/cm^2のマイクロ波を15分照射した.30mW/cm^2,15分照射と等しい吸収電力の15mW/cm^2,30分照射と42.0±0.1℃の温湯による処理群も設定した.妊娠18日に胎仔を観察したところ,電力密度20mW/cm^2以上のマイクロ波15分照射と温浴により外脳症(神経管閉鎖不全)が成立することが示されたが,15mW/cm^2,30分照射では異常胎仔は出現しなかった. 次に,マウスの大脳皮質発生障害の最高感受期である,妊娠13日の親マウスに,電力密度10,20,30または40mW/cm^2のマイクロ波を15分照射した.40mW/cm^2,15分照射と等しい10mW/cm^2,60分照射もおこない,42.0±0.1℃の温浴群も設定した.処理9時間後に一部胎仔の脳と肝臓を採取して,70kD熱ショック蛋白質(hsp70)の検出にもちい,他は固定,組織切片にして大脳外套の細胞死の頻度を調べた.その結果,40mW/cm^2,15分照射群と温浴群の脳,肝臓ともhsp70が検出された.大脳外套の細胞死頻度も40mW/cm^2,15分照射群と温浴群で増加していた.10mW/cm^2の60分照射では細胞死の増加はみられなかった. 以上2つの実験結果を比較すると,マイクロ波の神経管形成に及ぼす影響は,マウス母体に20mW/cm^2以上の電力密度で15分照射したとき観察でき,大脳の未分化神経系細胞の細胞死やストレス反応(hsp70合成)より低い線量で検出できた.しかし,体温上昇の影響が顕著に現れ,マイクロ波独自の影響を区別することは困難であった.
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