Project/Area Number |
03209210
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research on Priority Areas
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Jichi Medical University |
Principal Investigator |
埴原 恒彦 自治医科大学, 医学部, 助手 (00180919)
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Project Period (FY) |
1991
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Project Status |
Completed (Fiscal Year 1991)
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Budget Amount *help |
¥600,000 (Direct Cost: ¥600,000)
Fiscal Year 1991: ¥600,000 (Direct Cost: ¥600,000)
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Keywords | ネグリト / オ-ストラリア原住民 / 東南アジア / 適応進化 / 歯冠形態 / 頭顔面骨形態 |
Research Abstract |
現在の東南アジア諸集団の表現型はいわゆる置換他によって説明されるのが最も一般的である。すなわち2、000〜3、000年前に現在の中国南部から大量の集団が南下し、東南アジア大陸部から島嶼部に至るまでそこの先住民を吸収したとする説である。ネグリトはこのような混血を免れた集団としてよく知られているが、多くの成書には彼らを東南アジアにおけるオ-ストラロイド系集団として記載されている。ネグリトの表現型は低身長、黒い皮膚色、縮毛等によって特徴づけられ、多の大多数の東南アジア集団(比較的高身長、黄〜褐色の皮膚、直毛等)とは大きく異なりオ-ストラリア原住民、あるいはメラネシア諸集団に類似する。しかし、ネグリトの歯冠形態は比較的単純な講造を示し、東南アジア集団を特徴づけるスンダ型歯形質と考えることが出来る。一方オ-ストラリア原住民の歯冠形態はこのスンダ型歯形質よりも複雑で多くの化石人類にみられる古い特徴高い頻度で出現する。また頭顔面骨形態においてもネグリトは短頭、低・広顔など大多数の東南アジア集団にみられる特徴を示すのに対し、オ-ストラリア原住民、メラネシア集団は長頭〜過長頭、高・狭顔等の特徴を有する。このような事実は、現在の東南アジア集団の形態学的特徴は東南アジアという地域における小進化によって形成されたもので、上記の置換によってもたらされたものではないという可能性を示唆する。 上記のいわゆる地域進化仮説を検証するためにはダイアクロニックな比較検討が不可欠であることは言うまでもない。本研究では、上記の集団の南下が起こる以前の集団、すなわち東南アジアの新石器時代、青銅器時代、鉄器時代の集団と現代集団との比較も合わせておこなった。その結果、先史東南アジア集団は現在オ-ストラリア原住民、メラネシア諸集団よりも現在の東南アジア集団に型大敵には類似しているこが明かとなった。さらに、先史東南アジア集団の形態学的特徴は今日でも島嶼部集団の一部、例えばボルネオ島、タニンバ-ル諸島、小スンダ列島、スマトラ島等の集団に残存しているこが示された。 以上のとこから、東南アジア集団の形態学的特徴はその地域における適応進化によってもたらされたのではないかと考えられる。
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