Budget Amount *help |
¥2,300,000 (Direct Cost: ¥2,300,000)
Fiscal Year 1991: ¥2,300,000 (Direct Cost: ¥2,300,000)
|
Research Abstract |
本研究では、V、Cr、Mnの三つの遷移金属元素の蒸発傾向を決定するための第一歩として硅酸塩メルトの加熱実験を行った。以下にその予備的な結果と意義について報告する。蒸発実験に用いた出発物質は、次の組成を持つガラスである。MgO、9.18%;A1203,18.85%;Si02,61.17%;CaO,9.97%;V205,0.59%;Cr203,0.60%;MnO,0.52%.主要四元素の比は、急冷時に均質なガラスを生ずるようにforsterite‐anorthite‐quartz系の共融組成に選んだ。加熱には、高出力Xeランプを使った放射炉を用い、アルミナの融点(2050 C)によって温度更正を行った。それぞれの実験の出発物質は、約150mgでグラファイトの試料台に置き、Arガス中で4‐11.5分間保持した。回収試料は、重量計測の後、研磨薄片とし光学顕微鏡による観察、EPMAによる化学分析によって結果を導いた。実験結果は、次のように要約される。(1)三つの非揮発性元素Ca,Al,Mgの比は、ほぼ一定である。(2)他の元素は、様々な割合で蒸発し、その順序は、次のようである(V>Cr=Mn>Si)。今回の実験で観察された蒸発傾向の順序は、平衡凝縮に基づく凝縮温度から推察されるものと異なっている。Vの凝縮温度は、他のCr,Mn,Siより高温であるが、実験結果では最も顕著な損失を示した。この差異は、実験の酸素雰囲気、非平衡過程等の効果が考えられるが、少なくとも、蒸発順序が平衡凝縮温度と逆相関を持つという単純な仮定が常に成り立つわけではないことを示している。地球の上部マントルのV,Cr,MnのMgに規格化した存在度は、コンドライト隕石に比較してそれぞれ30%、40%、70%少ない。今回の実験で得られた蒸発順序が、地球始源物質に適用可能であるとすると、マントル中の損失順序を説明することができない。
|