Budget Amount *help |
¥1,200,000 (Direct Cost: ¥1,200,000)
Fiscal Year 1991: ¥1,200,000 (Direct Cost: ¥1,200,000)
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Research Abstract |
本研究の目的は星間分子として確認されている種々のイオンを中間体とするイオンー分子反応の反応機構を理論的に解明することにある。本年度は,N2OーHF van der Waals錯体の構造と安定性,異性化反応を理論的に研究した。また,反応機構の研究には,正確な反応ポテンシャルを描くことがまず必要となる。しかし,簡便な方法でポテンシャル曲面を反応経路全体にわたって化学的な精度で算出する理論は現在のところ開発されていない。そこで,反応ポテンシャルを簡便に,かつ精度よく求める理論の開発も行った。この方法はMultireference MollerーPlesset摂動論である。理論の基本的な考え方は次の通りである。一体近似であるSCF法からの改善を図るには電子間の衝突,相関を取り込まねばならない。電子相関効果には2種類あり,1つはCoulomb holeに由来するdynamical correlationであり,他の1つはnear degeneracyによるnonーdynamical correlationである。最初のdynamical correlationは電子間の衝突をそれぞれ独立に扱うIndependent electron pair approximation(IEPA)が良い近似となる。また,nonーdynamical correlationはmultireference近似が有効である。したがってstateーspecificなnonーdynamical correlation効果を0次波動関数に取り込んでおけば,残りはdynamical correlationだけになり,これらはIEPAで評価できる。この考え方に基づきmultiーconfigurational SCF波動関数をreference functionとする2次のMollerーPlesset(MP)摂動法を新しく開発した。本理論は,物理的描像も簡潔であり,計算も従来の方法に比べて飛躍的に簡単になる。また,H2,F2,N2,H2Oなどに応用し,ポテンシャル曲面を計算したところ,誤差は数%以内であり,極めて高精度の理論であることが数値的にも検証された。
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