Research Abstract |
不確定性原理と測定の量子限界の関係に関する極めて厳密な考察を行ない,次の結果を得た。 1.測定値の二乗平均平方根誤差を精度と定義し,非可換な物理量の同時測定の際の精度の積に関する不確定性関係をRobertsonの不確定性原理から証明した。 2.一般の連続測定に対する標準量子限界が成立するための厳密な条件を得た。そのために,測定後の状態に由来する二乗平均平方根誤差を分解能と定義し、測定器が精度より良い分解能をもつとき,Robertsonの不確定性原理から標準量子限界が証明されることが示された。 3.この証明のために,量子力学的測定の従来の誤差評価の不備を明らかにし,精度と分解能という2種の厳密な評価に基く推定理論の原理を確立した。 4.従来の量子非破壊測定の理論では,QND観測量でない限り量子非破壊測定が不可能であると主張されていたが,これらの成果により,非QND観測量を分解能より精度が高い測定器で測定した場合に量子非破壊測定が可能であることが,理論的に明らかにされた。従って,干渉計型検出器に対しても,装置の原理的改良により量子非破壊測定を行ない得ることになり,今後の研究が期待される。 5.従来から,加法的保存量と交換しない物理量は正確に測定できないことが厳密な証明なしに主張されてきた。これに対して,モデルの考察により,運動量の保存則にもかかわらず,位置の測定を運動量の測定と同程度の精度で行なえることを示した。また,この主張の完全に厳密な形の定量的限界をRobertsonの不確定性原理に帰着させて証明することに成功した。この結果は,特に,以前,柳瀬が求めた大ピン測定の限界に関する評価をも改良するものである。
|