記憶機能への海馬の量的・質的関与の様態に関する研究:一過性全健忘症例を通して
Project/Area Number |
03251222
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research on Priority Areas
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
田邉 敬貴 大阪大学, 医学部, 助手 (90171818)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松本 昌康 大阪大学, 医学部, 助手 (20192346)
木村 和文 大阪船員病院, 副院長 (40028402)
原田 貢士 大阪大学, 医学部, 講師 (70156503)
奥田 純一郎 大阪大学, 健康体育部, 助教授 (30093389)
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Project Period (FY) |
1991
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Project Status |
Completed (Fiscal Year 1991)
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Budget Amount *help |
¥900,000 (Direct Cost: ¥900,000)
Fiscal Year 1991: ¥900,000 (Direct Cost: ¥900,000)
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Keywords | 記憶 / 意味記憶 / 葉性萎縮 / Pick病 / ヘルペス脳炎 / SPECT / 海馬 / 側頭葉連合野 |
Research Abstract |
目的:平成2年度に、陳述記憶の獲得には、海馬領域を含む側頭葉内側部が重要な役割を演じることを一過性全健忘症例を通して実証した。本年度は、陳述記憶の中で知識に相当する意味記憶の神経基盤について検討した。 対象:語の意味記憶が選択的に障害される病態である語義失語像を呈する葉性萎縮7例、及び語義の障害が比較的軽いヘルペス脳炎1例。 方法:病巣部位をCTないしMRIにより形態的に同定し、さらにSPECTにより機能不全が生じている部位の拡がりを検討。 結果:全例に共通する形態的障害部位は左側頭葉前方部で、機能的にはさらに中間部の内側から外側にまで異常が認められた。右側頭葉前方部にも何がしかの病巣が全例みられた。葉性萎縮が右側頭葉前方部でより目立った1例では、相貌の認知障害が認められた。 考察:側頭葉内側部が両側性に侵襲された場合、エピソ-ド記憶は障害されても知識となっている意味記憶の障害は生じない。てんかん例ではあるが、左側頭葉前方部が切除された場合、語想起障害は生じても明らかな語の意味記憶の障害は生じない。左側頭葉後下部が障害された場合、漢字の失書や失読が生じても、語の意味記憶の障害は生じない。以上のことから左側頭葉中間部が浮かび上がってくる。サルでの嗅内野および嗅周野と側頭葉連合野との密接な連絡、自験例の機能障害部位を考慮すると、語の意味記憶を担う神経基盤として優位半球の海馬領域と側頭連合野が、また相貌の意味記憶を担う神経基盤として劣位半球の相同部位が重視される。ただし、選択的で重度の語の意味記憶の崩壊は、これまでPick病が疑われる症例でしかみられていないので、側頭葉を中心とする葉性萎縮過程は、単に部位ということだけではなく、意味記憶を支える系あるいはneural networkを選択的に侵す可能性が考えられた。
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Report
(1 results)
Research Products
(6 results)