Research Abstract |
我々は巨核芽球細胞株(MEGー01)の樹立(Blood66:1384,1985)を報告して以来,本細胞株におけるホルボルエステルによる分化誘導(Blood72:49,1988),分化誘導時のプロテインキナ-ゼCの細胞内局在の変化(J cell Biol107:929,1988),トロンボモジュリンの局在および産生(Thromb Haemostas64:297,1990),細胞内CーAMPによるトロンボモジュリンの発現増強(Thromb Res58:615,1990)など巨核球分化および機能に関する研究に取り組んできた。これらの研究成果に基づき,今年度は新たに以下の研究をまとめた。(Arch Biochem Biophy291:218,1991)。プロテインキナ-ゼC(PKC)は,細胞内カルシウム(Ca)やジアシルグリセロ-ル(DG)の濃度レベルに応じて,細胞膜へ移行し活性化することが知られており,また凝固因子の一つであるトロンビンは血小板のイノシト-ルリン脂質代謝を促進し,細胞内Ca濃度を上昇させることが報告されているので,この巨核球マ-カ-をもつMEGー01細胞において,トロンビン刺激時の細胞内CaとDGのレベルを測定し,PKCの細胞内移行による膜への局在性の変化を免疫化学的手法を用いて経時的に解析した。0.5u/mlのトロンビンで刺激後,15秒でPKCの細胞膜への局在化が認められ,90秒で最高に達した。細胞内でCa濃度も15秒内に急上昇し,60秒で最大となり,10分後もそのレベルで留まった。DGのレベルは二相性で,最初の上昇は15秒内に起こり,60秒後の低下の後,再び10分以上の上昇を維持した。しかしこれらの高値にもかかわらず,PKCの局在は10分後には細胞膜より解離し,細胞質内へ散在していた。PKCインヒビタ-であるH7存在下では,CaやDGの濃度パタ-ンを修飾することなく,PKCの膜への局在化が量的にも時間的にも増強されていた。これらの結果は,トロンビン刺激で細胞内CaやDGレベルが上昇し,PKCが細胞膜へ移行,PKCにより活性化されたシグナル伝達系により更に,PKCのダウンレギュレ-ションが起こることを示している。
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