Research Abstract |
1.モンゴル系諸言語のうち,ダグル語とバオアン語に含まれているモンゴル系の語蛋を抽出し,索引化する作業を進めた。具体的には,内蒙古大学古語文研究所編による『達斡爾語詞集』(1984)と『保有語詞集』(1986)の中から,同系語蛋を抽出し,単語カ-ド化する作業を完了した。抽出したダグル語中のモンゴル系同系語蛋は,異なり語数で約3,200語,バオアン語中のそれは,約1,500語であった。さらに,ダグル語については,設備品で導入したパソコンとソフトを利用して,ダグル語の音声形(国際音声字母表記),意味形(中国語簡体)字表記,日本語漢字かな表記),蒙古文古形(ロ-マ字転写表記)を,それぞれの表記形のままで検索し,表示できるシステム入力を行った。 2.ダグル語において抽出したモンゴル系の同系語罸に認められる音声変化のうち,語の第一音節において円唇母音が非円唇化する変化について調査を行い,次のような結論を得た。 (1)第1音節の円唇母音の非円唇化はu,o,u,oの4つの母音のすべてについて認められる(u→a,o→a,u→e,o→e)が,この音変化が生じた音声的な環境は,それぞれの母音ごとに異なる。 (2)第1音節の円唇母音の非円唇化現象は,ダグル語に特有の「円唇化子音」の発生と密接な関係がある。第1音節の円唇母音が非円唇化した場合,それに先行する語頭の子音は円唇化子音としてあらわる。その際,円唇化子音は,第一音狭の円唇母音が非円唇化する代償として生じたと考えられる。 (3)絶対語頭の円唇母音が非円唇化した場合には,語頭に子音wが生じている。また,語頭の子音がbとmの場合,母音の非円唇化に際してこれらの子音に変化は認められないが,これらはすでに円唇的特微を有しているので,円唇的特徴はそれらに吸収されたと考えられる。要するに,円唇母音の非円唇化の変化の本質は,円唇的特微が先行する子音に移行したものである。
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