Research Abstract |
△を開単位円板とする。この上の有界解析函数全体のなすHardy空間H^∞(△)は,一様ノルムで可換Banach環となる。H^∞(△)の極大イデアル空間の構造は極めて複雑で難解である。極大イデアル空間mは,互いに交わらない,部分集合mα(1α1=1)へ分解される。(mαはfiberと呼ばれる)。 この研究ではfiber内へ流れ(continuous flow)を導入することにより,エルゴ-ド理論を用いた,新たな極大イデアル空間の解析を試みた。現時点までに既得されている主要結果は次の2点である。 (1)コロナ定理と個別エルゴ-ド定理はタウバ-型定理を経由して,密接に関連していること。特にある種のoneーpoint partが△の集積点(mにおける)となっていることが個別エルゴ-ド定理から証明される。 (2)“流れがminimalのとき,導入される函数環はDirichlet環か?"というF.Forelli(Wisconsin大)が1970年Niceでのコングレスで提出した問題へ否定的解を与えた。Fiber内へ位置するminimalな流れ上で,導入される函数環はDirichlet環ではない,logmodular環となる。 これらの成果はかなりの発展性が期待される。現在概周期函数へ拡張し,一般化解析函数の作るHardy空間H^∞(K)においてH^∞o(K)の単一生成元の問題を目指している(多分否定的)。
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