Research Abstract |
ゼオライトLTAにNaおよびKのクラスタ-を作成し,その吸収スペクトルと反射スペクトル,および,交流帯磁率の測定を行った.その結果,光学スペクトルからは,ゼオライト細孔中にできたクラスタ-の表面プラズモンによると解釈される強い吸収バンドと,個別電子励起によると解釈される比較的弱い吸収バンドが観測された.個別電子励起に関しては,電子がゼオライトの細孔できまるサイズ(直径約10Å)で量子閉じ込めを受けた結果,電子準位が離散的になり,その間の遷移が観測されているものとして説明できる.一方,クラスタ-の電子数が,4個程度を超える当りから,表面プラズモンによる吸収バンドが顕著になり,当初の予想よりかなり少ない電子数でも,電子の集団運動である表面プラズモンが観測されることがわかった. また,Kクラスタ-を含むLTAの交流帯磁率は,約8K以下で急激に増大し,4K以下では,強磁性状態を示した.1.7Kでの飽和磁化は,0.65Gで,この値はクラスタ-ひとつ当り0.13μ_Bであり,最近注目されている有機物の強磁性と同程度の値を示した.Kクラスタ-の強磁性の発現機構は,まだ確定していないが,現在二つのモデルが考えられる.クラスタ-では,久保効果によって磁気モ-メントを持つことが知られているので,Kクラスタ-の磁気モ-メントがその間の相互作用によって整列し,強磁性状態になるというモデルが考えられる.もうひとつのモデルは,ゼオライト中のKクラスタ-の電子の波動関数が互いに関なり,全体的には金属的になっていることも考えられる.もし,フェルミ面での状態密度が十分高く,電子間の相互作用が大きければ,遍歴電子型の強磁性も考えられ得る.現在,これらの点も含めて,更に解明を進めている.
|