Research Abstract |
滝越湖成層は御獄山南麓の王滝村越周辺に分布している。これはよく成層した粘土,シルト,砂などの細かい互層からなり,火山性堆積物,れき層,土石流堆積物層,層内褶曲が頻繁に認められる。この地域には,1984年に長野県西部地震が発生し,それによって巨大崩壊と岩屑流が発生しており,過去にも度々地震や火山活動に伴う地殼変動を受けている。 滝越湖成層に認められる厚さ数mm〜cmの縞模様は,層準による岩相変化が小さく,縞模様を時間目盛りとして利用できる。また,火山性堆積物や土石流堆積物は連続性がよく,水平方向の対比を可能にしている。これらを指標として用いることによって,様々なイベントについて時間分解能の高い情報を読み取ることができる。ここでは,縞状堆積物中の土石流堆積物や層内褶曲が繰り返し存在することから,その発生させたと考えられる内陸地震の周期性を読み取ることを試みた。 この堆積物の堆積速度の見積るため,分析精度の高い名古屋大学年代資料測定センタ-の加速器質量分析計を用いて挟在する木片6試料の放射性炭素年代測定を行った。従来の研究では,滝越湖成層はテフラの対比から約3万年前に堆積したと推定されていた。今回の測定では,5万年以上前という予想以上に古い年代が得られ,これらの年代値から堆積速度を推定することはできなかった。この堆積物には有孔虫などの微化石は含まれず,縞模様の形成機構も明らかではない。しかし,塩原湖成層や佐渡中山層堆積物に比べ構成粒子が粗いことや縞模様の間隔がべき分布を示すことから,ひとつの縞が一回の大雨に対応する可能性が高い。 縞状堆積物の縞模様に時間座標を与えることができれば,過去の地震活動などのイベントの周期性を明らかにできる。わが国には,縞状堆積物が各地に分布しているので,同様の観点でそれらを調査する価値がある。
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