Research Abstract |
近畿地方北部の微小地震観測デ-タを1976年から1989年まで整理し,それらの震源を再決定し,深さ分布を詳細に求めた.これらの決定のためには,地殼の速度構造を求める必要があるので,この地域で行われた人工地震の波動のデ-タを集め,構造を決定した.深さの決定には浅い部分の構造が特に重要である.これらを考慮して,深さ分布を求めた.その結果,近畿北部の地震の深さの下限は12ー23kmであり,琵琶湖の西岸地域に深いところがあることが分かった.これらの方法を中国地方に適用し,中国地方の震源の深さを決定した.この地域は地震活動が近畿北部ほど活発ではないが,中国山地付近および山崎断層付近に活動が集中している.これらの地震は中国山脈付近で下限が浅く,8km程度だが山崎断層では20kmに達している.これらの地域の熱流量の測定値を集め,また,数カ所では新たにその測定を行い,地震の下限と比較した.地震の下限の地域的な変化は概略的には熱流量と関係し,熱流量が高いところでは地震の下限が浅いことが確かめられた.また,地震の下限の深さが急変する地域に過去の大地震が発生していることが推定される. 一方,人工地震による地殼構造調査からは,地殼中部の反射波の記録が得られ,この反射面の深さと地震発生の下限との関係が決定できる.その結果,反射面は地震発生の下限より3ー5km深く,地震の下限が深くなるところでは,反射面も深くなることが分かった.琵琶湖の西岸の花折断層付近では地震の下限,反射面ともに段差が付いて深くなることが分かった.これらのことは地殼の構造の発達を知る上でも,内陸地震の発生機構を解明するためにも重要である. 地震の卓越周波数の深さによる変化は,引き続き調査中だが,予備的な結果では,深さによる卓越周波数の変化は顕著ではない.今後,さらに数を増やして調査する必要がある.
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