Budget Amount *help |
¥1,600,000 (Direct Cost: ¥1,600,000)
Fiscal Year 1991: ¥1,600,000 (Direct Cost: ¥1,600,000)
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Research Abstract |
光合成細菌を材料に,光化学反応中心の電子伝達における電荷分布の変化に関する研究を行った.また,その電子伝達をひきおこすところの,光エネルギ-の吸収と移動に関する研究をあわせ行った.これらの研究により,生体構造内を電子や励起エネルギ-が移動してゆく際の,電場やタンパク質の役割を中心とする局所環境の影響について以下のような新しい知見を得た. 1.紅色光合成細菌Rhodopseudomonas molischiaumを用いて,チトクロムの光酸化反応の速度論的解析を行い,高い酸化還元電位を持つチトクロムも低い酸化還元電位を持つチトクロムも共に1マイクロ秒前後のほぼ等しい光酸化速度を持つことがわかった. 2.上記の(1)の結果と,カロチノイドスペクトルシフトによる膜電位測定の結果から,電子の移動距離と膜電位の形成の大きさは,一次近似的予想に反して比例的関係にないことがはっきりした.それを説明するために,タンパク質内やまわりの溶液環境に影響されて電位分布が複雑化しているとする仮説を提唱した. 3.好熱性緑色光合成細菌を用いて,光化学系I型の反応中心を持つ種でも,反応中心結合型チトクロムの性質は,紅色細菌のものと良く似ていることを示し,生物進化の過程で局所環境が反応の最適化にはたしてきた役割を明らかにしていく良い系を見つけた. 4.電子移動と多くの共通点を持つ励起エネルギ-移動について,緑色光合成細菌をもちいて解析を進め,タンパク質がほとんど関与しない励起エネルギ-移動系があること,人工的な色素集合構造が自己集合的に形成されそれが生体内の構造とたいへん良く似ていることを明らかにした.
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