Budget Amount *help |
¥2,000,000 (Direct Cost: ¥2,000,000)
Fiscal Year 1992: ¥700,000 (Direct Cost: ¥700,000)
Fiscal Year 1991: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,300,000)
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Research Abstract |
昨年度の研究成果に基づき,ミトコンドリアやミトコンドリア核融合過程を遺伝的に制御し,mtDNAの組換えを誘起しmtDNAの大幅な構造変換に関与するミトコンドリア融合課程を動的・分子形態学的に解析した. 真正粘菌Physarum polycephalumのミトコンドリア融合は特殊なミトコンドリアプラスミドによって誘起される.このmFプラスミドに注目して,粘菌アメーバ接合時のミトコンドリアとミトコンドリア核の挙動をDAPI蛍光顕微鏡法およびDiOC7を用た生体蛍光顕微鏡法を用いて解析した.粘菌アメーバの交配型遺伝子はmatAやmatBばかりでなくmatCも考慮し,粘菌アメーバの接合頻度を高めた.また,ミトコンドリアの融合頻度はミトコンドリアの交配型遺伝子であるmitA1,2,3を組合わせ,高頻度ミトコンドリア融合を可能にした.その結果,mFプラスミドを持たない株同士の接合では,ミトコンドリアの融合は起こらないが,mFプラスミドを持いる粘菌アメーバを交配すると接合期にミトコンドリア融合が誘起されることが確かめられた.この時期のミトコンドリア融合は同一接合子内の全ミトコンドリアが融合し,多核だったミトコンドリア核が1本になってしまうという激しいもので,mFプラスミドの優先的な伝達やミトコンドリア染色体の組換えが十分可能になるものであることがわかった.また,変形体の3つの不和合性遺伝子fusA,B,Cを揃え,変形体を融合させた場合にもミトコンドリアが融合し,mFプラスミドの優先的な伝播が起こることも確かめた. ミトコンドリア融合に直接関与する遺伝子を同定するため,ミトコンドリア融合欠損変異株を単離し,その欠損領域を解析した.全ての融合欠損変異株に共通してミトコンドリアDNAと組換えを起こす領域の近傍がmFプラスミドから欠損しており,そこには376アミノ酸残基のORFがあることがわかった.現在,先のORFを起点にmFプラスミドの全塩基配列を決定しつつあり,mFプラスミドの末端にはプラスミドの安定性,伝播能力あるいは線状DNAの複製様式に深く関わると考えられる複雑な構造の繰り返し配列があることも明らかになっている.
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