Research Abstract |
中央構造線(MTL)は奈良県五条市付近において,大きく屈曲し,その西部域(和泉山脈地域)に,横ずれデュ-プレクス構造帯を形成する。上部白亜系和泉層群はそのデュ-プレクス帯を覆って堆積している。そこで,本研究は,和泉層群堆積盆(ISB)の形成とMTLデュ-プレクスの形成とは密接に関係すると考え,MTLデュ-プレクス帯の実態とISBの沈降メカニズムを明らかにすることを目的とした。この研究で明らかになった点及び試みた点を以下に述べる。1.MTLデョ-プレクス帯:和泉山脈北側地域に発達する10ー15km間隔のNEーSW系横ずれ断層群(Miyata(1990)のF_1ーF_4等)を調査し,平行四辺形に近い形態の横ずれデュ-プレクス構造帯を明らかにした(29th IGC Field Trip Guidbook.1992準備中)。紀淡海峡のF_1断層については,神戸大学理学部付属臨海実験所の調査船を利用して,予察的な調査を行った。さらに,海底のF_1断層については,その方向・規模を検討する必要がある。2.ISBの沈降速度:和泉山脈地域で,和泉層群の主部相(タ-ビダイト相)は東西方向に積算すると,20,000m以上にも達する。主部相の東西方向の積算層厚と主部相に挟在する酸性凝灰岩のF.T.ジルコン年代とを検討し,ISBの急速な沈降(沈降速度,約2km/Ma)を明らかにした(堆積研究会報,v.35,p.115ー118,1991)。3.沈降メカニズム:和泉層群の厚いタ-ビダイト相には層平行移動に伴う小規模な変形構造がしばしば発達する。この変形構造の解析にもとづいて,地層の移動方向を明らかにした(論文投稿中)。研究成果にもとづき,MTLリ-リ-シング屈曲における伸長条件下で,MTLデュ-プレクス帯を覆う和泉層群のタ-ビダイト相が層平行移動を伴うロ-ル・オ-バ-背斜(大構造)を形成し,ISBの堆積中心を急速に沈降させた可能性を得た(日本地質学会第99年会講演要旨,1992;29th IGC,Abstr.,1992発表予定)。
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