原水温度1種類について、線電極の研究を一通り完了し、以下の結果が得られた。 水面の裸眼観察の結果、イオン電流I=0でも主流速度U_∞≧0.6m/sでは波立ちがみられた。一方、I≧16μAではU_∞に関係なく必ず波立ちがみられ、I≧100μAでは水面が激しく波打つのが観察された。 (1)物質伝達率とレイノルズ数の関係 Iが一定のもとでは、低い主流湿度H_Rにおける物質伝達率h_Dはレイノルズ数Reの増加とともに減少するが、H_Rが大きくなるにつれてh_Dがほぼ一定値をとるようになる。 (2)物質伝達率に対するイオン電流の影響 Iの増大につれてh_Dも増大する。本研究の条件の範囲内では、低いH_R、低いU_∞の範囲のh_Dは、高いH_R、高いU_∞の範囲のh_Dより平均して50%程度も大きく、H_R、U_∞が大きくなるにつれて小さくなる。Iを一定としたときのh_Dの最小値はH_R、U_∞によって決まると考えられる。 (3)イオン電流による蒸発量の制御範囲 本研究の条件の範囲内ではH_R=40%、U_∞=0.2m/sにおいてIを0から144μAまで変化させたときに最大の制御範囲が得られ、I=0のときを1として約7倍まで可能であった。 (4)消費電力 蒸発促進時におけるイオン風の発生に必要な電力を知ることができた。 以上、要するに、イオン風によって蒸発促進を行った場合の、強制対流物質伝達率とレイノルズ数、およびイオン電流との関係、またイオン電流を変化させた場合に制御できる蒸発量の範囲を示すことができた。 なお、櫛形電極については現在実験中であり、明年度も継続の予定である。
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